本研究の最終目標は、世界に通用するような優良国産鶏を、ゲノム育種法により正確かつ迅速に作出することにある。この背景には、我が国には国産の高性能鶏がほとんど存在せず、真の鶏卵、鶏肉の自給率は6%未満である事実がある。ニワトリの卵肉はなくてはならないタンパク源である。その自給率を向上させることができれば、国家・国民に貢献できることは明白である。ゲノム育種法により、優良国産鶏を作出するためには、その準備段階として、ニワトリの卵肉に関する諸形質を支配している遺伝子座さらには遺伝子そのものを明らかにすることが必須である。本研究では、quantitative trait loci (QTL)解析および遺伝子発現解析を行って、ニワトリ経済形質発現に関与している遺伝子座の正確な位置ならびに遺伝子そのものを解明することを目的とした。 本年度はQTL解析の精度を向上させると共に、そのQTL解析結果に基づいて、成長形質および卵形質に関する候補遺伝子を数種選定しその同定を試みた。尚、QTL解析を行った成長関連形質は、孵化から16週齢までの体重、脚長および両者の成長曲線パラメーターであり、卵関連形質は、卵生産形質(初産日齢、産卵率など)、 卵外部形質(卵重、卵サイズなど)および 卵内部形質(卵黄重、卵黄サイズなど)であった。 成長関連形質では、24の形質に関与する10のQTLを、卵関連形質では、60の形質に関与する30のQTLを発見した。この結果に基づき、成長関連形質では2つ(AおよびB遺伝子)の、卵関連形質では3つ(C、DおよびE遺伝子)の候補遺伝子を選定し、その発現解析を行った結果、AおよびB遺伝子は脚長形質発現に関与している可能性が示されたが、確定までには至らなかった。一方、C-E遺伝子は、卵関連形質の発現には関与していない可能性が示された。コロナ対策で実験遂行が阻害された1年であった。
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