研究実績の概要 |
本研究は、腸内に豊富に存在する乳酸菌がもたらす腸管免疫調節作用について、ゲノムDNAとその断片であるDNAモチーフに着目して明らかにすることを目的とする。そのうえで、有効な分子素材として知られているオリゴDNAを用い、研究代表者が開発に成功した経口用オリゴDNA微粒子(ODNcap; Mol Ther., 23, 297, 2015; Wiley Interdiscip Rev Nanomed Nanobiotechnol. 8, 631-637, 2016)を基盤とする研究計画を立案した。オリゴDNAは、胃酸や酵素による分解を受けることから、経口投与は難しいとされてきたが、ODNcapは経口ルートから安定的に腸管粘膜へと送達させることが出来る。これまでに、アトピー性喘息モデルにおけるODNcap添加飼料の自由摂取群において、アレルギーマーカーの顕著な抑制効果が得られたことから、腸、糞便、肺胞洗浄液および肺組織に絞り詳細に解析を行った。糞便サンプルにおける16Sメタゲノム解析の結果、ODNcap自由摂取群において、バクテロイデス門/フィルミクテス門の割合が対照群と比較して有意に減少した。加えて、アレルギー性炎症に関与する腸内細菌を同定する目的から、細菌群の比率と血清および肺胞洗浄液中の抗原特異的IgE量について相関性を分析した結果、28種の細菌群を発見した。食餌に含まれる乳酸菌オリゴDNA微粒子が、自由摂取により腸管局所に送達され、アトピー性喘息に伴う肺炎症の制御に寄与する腸内菌叢の変化をもたらした作用機序については、さらなる調査を要する。また、効率的に腸管に送達されるオリゴDNA微粒子構造を明らかにすることで、機能性食品、家畜飼料、創薬への展開が可能となる。
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