研究課題
ダニ媒介性フラビウイルスであるダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)の自然界分離株では、ウイルスゲノムRNA中のウイルス由来長鎖ノンコード(lnc)RNAの産生に関わるとされる3’非翻訳領域(3’-UTR)に欠損やpolyA配列の挿入が認められ、これらが病原性に影響を与えている可能性が示唆された。そこで本年度の研究では、3’-UTR中のlncRNAの産生に関わると推定されるRNA2次構造に変異を導入することで、lncRNAの産生性の変化が宿主におけるウイルスの増殖性や病原性に与える影響の解析を試みた。哺乳動物細胞にTBEVの自然界分離株を感染させた所、長さの異なる2本のlncRNAが産生されているのが確認されたのに対し、3'-UTRに変異を持つ株では長い方のlncRNAは産生されず短い方のlncRNAの1本のみが産生されていた。さらにマダニ由来培養細胞にTBEVを感染させて解析した所、親株では長い方のlncRNAのみが産生されているのに対して、3'-UTRに変異を持つ株では短い方のlncRNAのみが産生されていた。以上の結果より、ウイルスゲノムRNAの3’-UTR内の特定のRNA2次構造がlncRNAの産生性に影響を与える事が示され、この領域を自然界分離株で比較した所、TBEVの中で高度に保存されていることが明らかになった。さらに、哺乳動物とマダニの細胞の中では産生されるlncRNAに差異が認められ、宿主毎のRNA分解酵素によりフラビウイルスゲノムRNAに対する分解反応性が異なることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、フラビウイルスのウイルス由来lncRNA産生に関わるウイルス遺伝子RNA領域・構造の同定を行うことができ、また宿主動物間でのRNA分解系等の差異がウイルス由来lncRNAの産生に影響を与えている可能性を示すことができたため、順調に研究計画を遂行していることができていると判断される。
flv-lncRNA領域に、変異・欠損を導入した組み換えウイルスを作製する。作製した組み換えウイルスと自然界分離株を、哺乳動物(マウス)や媒介節足動物(ダニ/蚊)、及びそれらに由来する各種培養細胞に感染させる。また、正常/変異flv-lncRNAを単独、もしくはウイルス感染と共に動物や細胞に導入し発現させる。上記実験系を用いて、哺乳動物及び媒介節足動物のフラビウイルス感染におけるflv-lncRNAの生理機能を解析する。1.哺哺乳動物での病態発現機序におけるflv-lncRNAの機能解析ウイルスをマウスモデルへ感染させ病原性への影響を比較解析する。これにより哺乳動物における病原性へ影響を与えるflv-lncRNAの責任配列を同定し、そのRNA構造への影響を明らかにする。また、ウイルスを感染した哺乳動物細胞・マウスにおいて、各細胞・組織中のウイルス増殖性・flv-lncRNAの発現動態と、感染動物の症状・致死性・病理変化との関連性を調べ、flv-lncRNAの産生・作用部位とそれによる増殖性・病原性の変化を明らかにする。2.節足動物での持続感染性におけるflv-lncRNAの機能解析ウイルスを、蚊やダニ等の節足動物及び由来する培養細胞に感染させ、ウイルスの持続的な増殖性、感染細胞障害性や宿主動物に対する病原性、及び感染節足動物組織におけるウイルスの分布状況、経齢間・経卵巣伝達性を解析する。さらに、マウスをウイルス感染節足動物に吸血させ、ウイルスが感染伝播するか検討する。これによりフラビウイルスの節足動物における持続感染性及びウイルス伝播における、自然界で高度に保存されているflv-lncRNAの役割を明らかにする。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (23件) (うち国際共著 4件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (41件) (うち国際学会 3件、 招待講演 10件)
Biomed Res.
巻: 39 ページ: 27-28
10.2220/biomedres.39.27.
Nat Commun
巻: 9 ページ: 436
10.1038/s41467-018-02882-0.
Virus Res.
巻: 249 ページ: 52-56
10.1016/j.virusres.2018.03.006.
病原微生物検出情報
巻: 39 ページ: 46-47
日本ウイルス学会北海道支部会報
巻: 49 ページ: 10-15
Ticks Tick Borne Dis
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.ttbdis.2018.03.016.
獣医畜産新報
巻: 70 ページ: 268-269
巻: 70 ページ: 429-432
感染・炎症・免疫
巻: 47 ページ: 80-81
獣医疫学雑誌
巻: 21 ページ: 1-2
日本医事新報
巻: 4877 ページ: 59
化学療法の領域
巻: 33 ページ: 1645-1651
ウイルス
巻: 67 ページ: 143-150
Emerg Microbes Infect
巻: 6 ページ: e82
10.1038/emi.2017.69.
巻: 38 ページ: 126
巻: 8 ページ: 103-111
10.1016/j.ttbdis.2016.10.005
J Virol Methods
巻: 240 ページ: 14-20
10.1016/j.jviromet.2016.11.006.
Dev Comp Immunol.
巻: 68 ページ: 98-107
10.1016/j.dci.2016.11.013.
PLoS Pathog
巻: 13 ページ: e1006475
10.1371/journal.ppat.1006475.
Viruses
巻: 9 ページ: 7
10.3390/v9070189.
Emerg Infect Dis
巻: 23 ページ: 1753-1754
10.3201/eid2310.170918.
J Virol
巻: 91 ページ: e01028-17
10.1128/JVI.01028-17
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 114 ページ: 9960-9965
10.1073/pnas.1704454114.