研究課題
本研究においては、ダニ媒介性フラビウイルスであるダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)について、これまでの研究成果で推定された、ウイルス遺伝子RNA由来長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)の産生に関わると推定される領域に変異を導入したウイルスを作製し、その性状を解析した。ウイルスを感染させ、細胞内におけるウイルス由来lncRNAの産生状況について解析した所、哺乳動物細胞と節足動物由来培養細胞で産生されるlncRNAのパターンに相違があることが明らかになった。また、哺乳動物細胞においては変異による増殖性の相違は認められなかったが、節足動物細胞においては増殖の遅延が認められ、特定のウイルス由来lncRNAが、節足動物における効率の良い増殖に関与している可能性が示唆された。またマウスモデルにウイルスを感染させ、病原性を検討した所、変異により接種時の病原性の上昇が認められた。さらにレポーターアッセイにより、ウイルス感染細胞中のインターフェロン応答を解析した所、ウイルス感染によりインターフェロンプロモーター活性の抑制が認められたが、変異によりこの抑制が増強されることが示された。これらの事よりウイルス由来lncRNAはマウス体内において、自然免疫応答の制御機構があり、これが病態発現につながっている可能性が示唆される。以上の成果から、ウイルス由来lncRNAは感染宿主の種に応じて異なる機能を持っており、これらが自然界におけるウイルス伝播や、病態発現に関与していると考えられるため、今後詳細に解析していく必要があると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、ウイルス由来lncRNAの宿主への感染時の機能について、哺乳動物及び節足動物の動物モデル、培養細胞を用いた解析を行っており、宿主毎にことなる機能がある可能性を示すことができており、順調に研究計画を遂行していると考えられる。
1. 哺乳動物での病態発現機序におけるウイルス由来lncRNAの機能解析哺乳動物のウイルス由来lncRNAに関与すると推定される領域に様々な変異を導入した組換えウイルスを作製し、哺乳動物細胞やマウスモデルへ感染させ、ウイルスを感染した哺乳動物細胞・マウスにおいて、各細胞・組織中のウイルス増殖性や感染動物の症状・致死性・病理変化との関連性を調べる。また、各種免疫関連因子や細胞内シグナル因子の胴体を解析することによって、ウイルス由来lncRNAが、宿主の生理機能にどのような機序で作用し、病態発現につながるかという点に関しての分子レベル及び生体内でのメカニズムについて考察する。2. 節足動物におけるフラビウイルスの持続感染性の解析拙速等物を用いたフラビウイルスの持続感染モデルを基に、フラビウイルスの持続感染メカニズムを明らかにするため、フラビウイルスを蚊やダニなどの節足動物及び由来する培養細胞に感染させ、プルダウンアッセイを行うことによって、ウイルスRNAと相互作用する宿主タンパク質を同定する。さらにウイルスRNAー宿主蛋白の結合性の解析及び宿主蛋白の発現ノックダウンを行い、持続感染性への影響を検討することで、フラビウイルスの節足動物細胞における持続感染の分子レベル及び生体内でのメカニズムについて考察する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 5件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (40件) (うち国際学会 1件、 招待講演 13件)
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