研究課題/領域番号 |
17H03912
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山岸 潤也 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 准教授 (80535328)
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研究分担者 |
鈴木 穣 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40323646)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シングルセル / トランスクリプトーム / 原虫 |
研究実績の概要 |
現在、1細胞のトランスクリプトームを1万個以上同時に取得する技術が利用可能となっている。この新規技術は一般にガンや免疫応答の解析において先行して利用されているが、原虫そのものの応答や、原虫―宿主細胞の応答をトランスクリプトームから解析する試みはまだ行われておらず、新規かつ特異的な知見が得られる可能性が期待できる。 そこで本プロジェクトでは、この飛躍的な技術革新を原虫病研究に適用し有用性を評価するための実証試験を提案した。具体的には各種原虫(Trypanosoma, Toxoplasma, Plasmodium)、各種実験系(in vitro培養実験, in vivo感染実験)を対象とし、段階的に困難・複雑な系に挑戦することで着実にノウハウを蓄積し、当該分野での基盤形成を目的とする。 2年目にあたるH30年度は、当初想定していたBioRad社ddSEQ Single-Cell Isolator、あるいは、10x genomics社製のChromiumの代わりに、新規に発売された、BD社のRhapsodyシステムを導入し、原虫1細胞トランスクリプトーム系の確立を試みた。本システムは、ドロップレット型のddSEQ、Chromiumと異なり、マイクロウェルで1細胞を分離することを基本原理とする。また、各ウェルへの細胞導入、ビーズ導入、細胞溶解の各ステップを顕微鏡観察することができることは、非定型な原虫細胞の解析を行う上で大きな利点と考えられた。実際、ddSEQによるトリパノソーマ原虫のライブラリー構築については、何が問題だったかを明らかにすることも含めてうまくいかなかったが、Rhapsodyシステムでは、各ウェルへの原虫分離、および、溶解を確認することができた。トキソプラズマについては、ブラディゾイト誘導後の細胞を用いたライブラリーの作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、原虫の1細胞解析を実施できるシステムの選定で予定の遅れを招いたが、今年度は、BD社のRhapsodyシステムを導入し、これが原虫解析に適していることが確認できたことから、今後の解析の目途が着いた。3年目にあたる令和1年度は、Rhapsodyシステムを用いて研究の加速を図る。
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今後の研究の推進方策 |
3年目にあたる令和1年度は、トキソプラズマおよびトリパノソーマ原虫の1細胞データを取得する。また、得られる大規模塩基配列を処理する解析パイプラインを確立する。 トキソプラズマを培養細胞に感染させ高pH処理等の刺激によりタキゾイトからブラディゾイトへ誘導する。その際、誘導開始から継時的にサンプリングを行い、1細胞ライブラリーを作成する。高pH処理では全ての感染原虫がブラディゾイトへ移行するわけではなく、一定の割合の原虫がタキゾイトのまま増殖するが、遺伝的に同一の各原虫の運命が二極化する分子情報処理メカニズムは全く不明であり、その解明を目指す。一方、トキソプラズマの感染により、宿主細胞の遺伝子発現も変化することが知られている。これを1細胞レベルで再解析することで、これまでの方法では見えなかった宿主―寄生虫の相互作用の発見を試みる。
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