トキソプラズマ原虫は他の原虫と同様に独特で複雑なライフサイクル(感染環)を持ち、基本的には栄養型(タキゾイト)、休眠型(シスト)、虫卵(オーシスト)の3つの形態をとる。ヒトを含めてほぼ全ての哺乳類、鳥類に感染する可能性があることから、食肉は種類によらず感染源になりうる。感染動物由来の食肉を生食したり、加熱が不十分である場合、あるいは終宿主であるネコの糞中のトキソプラズマのオーシストが口の中に入ることによって,ヒトを含め、様々な動物がトキソプラズマに感染し、感染した動物の組織内でシストを形成する。本研究では、食肉由来感染症のトキソプラズマについてこの感染阻止を目指して、実際の感染源となるシストの性状解析を行う。 本年度は、昨年度までに同定したトキソプラズマのシスト壁構成因子及びシスト形成関連因子について大腸菌発現によって蛋白質全長あるいは一部の機能部位を発現させる。これらをマウスに免疫することで、抗体を作製した。これらの抗体を用いて、間接蛍光抗体法及び電子顕微鏡で原虫蛋白質の局在の同定を行った。これらのシスト壁構成因子及びシスト形成関連因子のin silicoでの構造予測を行い、これらに阻害作用のあると予想される薬剤群の構造予測を行った。 この薬剤予測に基づき、薬剤のターゲットとなる原虫因子の整理と絞込みを行った。これらの解析結果は、シスト壁構成因子及びシスト形成関連因子を薬剤ターゲットとした抗原虫薬の開発につながる。
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