内臓肥満をベースとし合併する高血圧症や心不全を含む循環器疾患は、様々な関連臓器の機能異常や障害が関与する慢性多臓器性疾患の病態を呈する。本研究計画は、「内臓肥満による心血管疾患の発症または予防における脂肪組織由来サイトカイン(アディポサイトカイン)の役割の全体像を解明する為に、その心臓、脳、腎臓に及ぼす影響に加えて、血管を含むこれらの臓器連関を介した病態制御機構にも着目して、細胞ー組織ー生体レベルで検討する」ことを主たる目的とするものである。本年度は主に以下の成果を得た:1)アディポサイトカインであるケメリンの活性断片(chemerin-9)がラット摘出心房筋標本において収縮力と心拍数に影響を及ぼす影響(組織レベル)を見出し、そのメカニズムの一端を検討して学会発表(日本獣医学会学術集会)を行った、2)高血圧症モデルラットの中枢(脳)におけるケメリンとケメリン受容体の発現レベルの変化を検討し、特に受容体の遺伝子ノックダウンが全身血圧に及ぼす影響(生体レベル)を明らかにして学会発表(日本循環薬理学会および日本薬理学会年会)を行った、3)ラット脳組織由来初代培養アストログリア細胞において、ケメリンの活性断片(chemerin-9)がその増殖能・遊走能と炎症性反応に及ぼす影響(細胞レベル)の検討を行い、予備的なデータを得ることが出来た、その他として、4)生体ラットにおける代謝ケージを用いた利尿および飲水量測定実験と摘出腎動脈標本を用いた収縮力測定のセットアップを行った。
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