研究課題/領域番号 |
17H03922
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
西藤 公司 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20365422)
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研究分担者 |
菅井 基行 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (10201568)
秋山 真志 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (60222551)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ブドウ球菌 / 皮膚感染症 / 病原因子 / 表皮剥脱毒素 / スフィンゴ脂質 |
研究実績の概要 |
本年度はスフィンゴ脂質合成酵素を皮膚において欠損するコンディショナルノックアウトマウスの作出を試みたとともに、ブドウ球菌の病原因子である表皮剥脱毒素の酵素基質特性について以下の研究を行った。 1.ケラチン5プロモーターの活性下でCreERT2を発現するマウス(Krt5-CreERT2)と、スフィンゴ脂質合成酵素遺伝子であるsptlc2の前後にloxP遺伝子が挿入されたマウス(Sptlc2 flox)とを交配して新規コンディショナルノックアウトマウスを作出した。作出したマウスにタモキシフェンを腹腔内投与して遺伝子組換えを誘導し、免疫組織化学染色を実施したところ、表皮基底層におけるSptlc2蛋白の染色性が著減したことから、Sptlc2を後天的に欠損するマウスが作出されたことが確認された。 2.ヒト水疱性膿痂疹やブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の原因となる、黄色ブドウ球菌由来の表皮剥脱毒素(ET)の酵素基質特異性について解析を行った。ETの標的蛋白であるヒトデスモグレイン1(Dsg1)と、標的蛋白とならないイヌDsg1の細胞外領域に分布する10アミノ酸(aa271-280)のペプチド合成を行い、ETBによるDsg1の阻害実験を行った。その結果ヒトDsg1に由来するペプチドの存在下ではETBによるDsg1の切断が阻害されたのに対し、イヌDsg1に由来するペプチドの存在下では前述の阻害は認められなかったことから、Dsg1上の同領域がETBの基質特異性を決定するモチーフとなる可能性を示した。 3.羊乳房炎の乳汁から同定された黄色ブドウ球菌に由来する新規ET(ETE)の酵素活性および気質特性について解析した。その結果、ETEは羊、山羊、ヒト、マウス由来のDsg1を切断するのに対し、ウシやイヌ由来のDsg1を切断しないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はスフィンゴ脂質合成酵素の欠損マウスを作出し、また黄色ブドウ球菌の病原因子である表皮剥脱毒素の酵素活性および基質特異性について新知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はスフィンゴ脂質合成酵素の欠損マウスにおいて、角層細胞間脂質によるバリア機能異常が認められるか、また同マウスではブドウ球菌の角層浸透性が亢進するかを解析する予定である。また皮膚バリア欠損マウスの皮膚にET産生能を有するブドウ球菌株と非産生株を塗布し、ETの存在下では菌による角層浸透性が亢進するかを解析するとともに、ETが角質細胞間の接着装置であるコルネオデスモソームを離開させるかについて解析を進める予定である。 さらに今後は、ブドウ球菌の病原因子と考えられるETや細胞壁タンパク質の遺伝子を欠損した変異ブドウ球菌を複数作成し、菌の表皮内侵入に重要となる菌側の病原因子についても解析を進める予定である。
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