研究課題/領域番号 |
17H03924
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮沢 孝幸 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (80282705)
|
研究分担者 |
入江 崇 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (70419498)
上田 真保子 東海大学, 付置研究所, 特定研究員 (60760353)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | グリカン / ワクチン / レトロウイルス / ネコ白血病ウイルス |
研究実績の概要 |
ネコ白血病ウイルス(FeLV)は猫に免疫不全や白血病を引き起こす。猫はFeLV感染後数年でほとんどが死に至るため、FeLV感染症は獣医臨床上大きな問題となっている。FeLVに対するワクチンは90年代から市販されているものの感染防御能は低い。感染防御能の低さは、ワクチンが中和抗体を誘導しにくいことによるが、その原因はFeLVの外被糖タンパク質上のグリカン(糖鎖)にある。本研究ではグリカンによって隠された中和エピトープを露出させたシュードタイプウイルスを作製し、感染防護効果能の高いFeLVワクチンを作出することを目的とする。本年度の成果は以下の通りである。 in silico解析によりFeLVサブグループAのエンベロープタンパク質(Env)の高次構造を予測した。また、日本で分離されたFeLV-A F8701株の感染性分子クローンを作出した。F8701株は当初FeLV-Aのみを含むと考えられたが、塩基配列の解析の結果、受容体結合部位の配列が大きく異なるクローンが存在することが分かった。これらクローンを発現ベクター(pFBベクター)に導入し、受容体干渉試験で受容体解析を行ったところ、FeLV-Aとともに、FeLV-A、FeLV-B、FeLV-Cと受容体干渉しないクローンも含まれていた。このことから、F8701株はFeLV-Aとともに新規のサブグループが含まれていた可能性が示唆された。さらに、欧米株(Glasgow-1株)ならびに日本株(F8701株)について、Env外被領域に存在する10カ所のN型糖鎖付加部位のアミノ酸Asnに相当する塩基配列を、部位特異的変異導入法にてAspに改変した。改変したenv遺伝子をpFBベクターに組み込んだ後、TELCeB6細胞(マウス白血病ウイルスのGag-Pol発現細胞でnlsLacZをレポーター遺伝子とする)に導入し、シュードタイプウイルスを得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、グリカンに隠されていると予想されるエピトープに対するウサギ抗体は、研究費不足したため得られていない。その一方で、予想外の結果として、未知の受容体を使用するFeLV変異株を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的に当初計画通りに研究を進めていくが、未知の受容体を使用するFeLV変異株に対しては、遺伝的解析を進めるとともに、その受容体の同定を試みる。
|