研究課題/領域番号 |
17H03925
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
服部 雅一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40211479)
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研究分担者 |
保富 康宏 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, センター長 (90281724)
福島 祐二 京都大学, 医学研究科, 研究員 (90583146)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CD163-CD30相互作用 / TCRシグナル阻害 / 老化関連T細胞 |
研究実績の概要 |
老化関連T細胞(SA-T細胞)はTNFスーパーファミリー分子の1つであるCD153(CD30リガンド)をその細胞表面に発現している。CD153遺伝子破壊マウスでの解析および抗CD153抗体を用いた投与実験により,CD153-CD30相互作用がマウス個体におけるSA-T細胞の誘導(分化)・維持に重要であることが明らかとなっていたが,その分子機構については不明であった。本年度はその分子機構を明らかにするために, CD153を強制発現させた細胞株(mCD153/EL4-細胞)を作製し,TCRシグナルに及ぼす影響について解析を行った。その結果,mCD153/EL-4細胞は親株のEL-4細胞に比べ,有意にTCR刺激後のIL-2およびIL-4産生が低下していた。このTCRシグナルの低下は抗CD153抗体の添加により解除されること,またEL-4細胞がCD30を発現していることから,EL-4細胞同士の接触によりCD153-CD30相互作用が起こり,細胞内に何らかのシグナルが伝達し,TCRシグナルの阻害に働いていると考えられる。このTCRシグナルの低下は抗CD3抗体(2C11)刺激のみならず,PMA/Ionophore刺激でも低下していることから,TCR直下の阻害ではなく,TCRシグナルの下流における阻害であることが示唆された。また,この細胞にCD30-Igキメラ分を添加すると細胞同士の強い凝集が起こることが明らかになった。この結果は,これまでその実態が不明であったCD153を介するリバースシグナルと呼ばれていたシグナル経路が実際に機能していることを強く示すものである。現在,このシグナルが間違いなくCD153を介したものであることを確認するために,CD30をCRISPR-Cas9系を利用しCD30遺伝子を破壊した細胞株を作製している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラボの引っ越しに伴いこれまで使用していた動物飼育施設の使用ができなくなり,マウスの移動(受精卵凍結とSPF化)に時間がとられ,計画していたマウスを用いた移入実験ができなったため,計画に遅れが生じた。しかし,新しい施設でのマウス飼育も再開され,計画した実験を遂行する準備が整ったことから,早急に実験を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今回見いだしたCD153-CD30相互作用によるTCRシグナル阻害がどのようなシグナルを介したものであるのかを明らかにするために,CD153に会合する分子を解析する予定である。そのため,現在ビオチンリガーゼを用いた新しいシステムによる網羅的解析の準備を整えている。また,この現象が生体における免疫反応においてどのような意義を持つか,特に免疫チェックポイントの観点からCD153およびCD30遺伝子破壊マウスを用いて解析していく予定である。一方,実験が滞っていたTLR7刺激B細胞の移入実験については,マウス実験の環境が整ったので,実験を再開した。 平成30年以降に計画していた虚血性腎障害モデルにおけるSA-T細胞の解析については,前倒しで解析を進めており予想していたような結果が得られつつある。この実験については京大医学部腎臓内科と共同で今年度中に論文をまとめる予定である。
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