研究課題/領域番号 |
17H03927
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大和 修 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (80261337)
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研究分担者 |
矢吹 映 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (10315400)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 動物遺伝子病 / 神経変性性疾患 / 分子基盤 / 遺伝子型検査 / 疾患モデル動物 |
研究実績の概要 |
トイプードルの家族性成犬発症型運動失調症については、特定のゲノム領域に1遺伝子全域を包含する広域(約50 kb)の欠失を見出した。この欠失を簡易に判定する遺伝子型検査法を作成し、これまでに蓄積した発症例(約30頭)および非発症例(同家系メンバー)で調査した結果、本家系内においては完全に遺伝子型-表現型の一致を確認できた。本疾患については、これまで実施してきた臨床所見、病理組織学的所見、ゲノムワイド関連解析、次世代シーケンサーによる全ゲノム解析、RNAシーケンス解析等、すべてのデータをまとめて論文公表を準備中である。 犬のオロット酸尿症およびメチルマロン酸尿症については、前者は特に尿素サイクル異常症に関わる遺伝子群、後者はメチルマロン酸尿症に関わる遺伝子群のエクソンおよびエクソン-イントロン結合領域を調査したが、候補となりうる配列異常は認められなかった。今後は、イントロン領域およびプロモーター領域にも検索範囲を広げて調査する予定である。 また、全ゲノム解析を終えた犬のエーラス・ダンロス症候群、神経セロイド・リポフスチン症およびカロリ病、ならびに猫のライソゾーム蓄積病については、カロリ病においてPKHD1遺伝子に、家系内で表現型-遺伝子型の一致する候補変異を同定した。 一方、今年度の計画に挙げていなかったが、新たに犬のムコ多糖症(MPS)ならびに猫のポンペ病(糖原病II型)およびニーマンピック病の解析を開始した。その結果、犬のMPSについては、以前に解析したMPS VI型のARSB遺伝子の他、MPS VII型のGUSB遺伝子のエクソンおよびエクソン-イントロン結合領域に候補となる異常配列は認められなかった。猫のポンペ病およびニーマンピック病では、それぞれGAA遺伝子およびNPC2遺伝子に候補変異となる異常配列が認められたため、現在、その変異についての集団内調査を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において解析を開始した疾患の中では、本研究目的の中心となる家族性成犬発症型運動失調症の原因変異の同定に関して、ほぼ結論を導くためのデータをすべて得ることができ、論文作成を開始している。その他の疾患についても、犬のカロリ病ならびに猫のポンペ病およびニーマンピック病において、原因変異候補を同定することができた。さらに、すでに数疾患に関して全ゲノム解析データが得られているため、これらのデータを基盤として今後も順調に調査することができる。次年度にも全貌解明できる疾患がいくつか出てくると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究目的の中心となる家族性成犬発症型運動失調症については、早期の論文公表を目指す。また、期待以上の結果が得られている疾患(犬のカロリ病ならびに猫のポンペ病およびニーマンピック病)については、原因変異の同定という最終的な段階に進めて行く。また、計画通りに解析が進んでいる疾患(犬のオロット酸尿症、メチルマロン酸尿症、エーラス・ダンロス症候群ならびに猫のライソゾーム蓄積病)については、それらの全ゲノム解析データに基づいて、引き続き変異候補を選択してその真偽を評価していく。 抗酸化サプリメントを使った治療試験については、犬の変性性脊髄症への効果は今後も観察していくが、同様に蛋白ミスフォールディングが病態進行に関与するような他の疾患(犬のラフォラ病)についても、本サプリメントのよい効果が期待できるため、診断された場合には適宜研究対象としていく。 さらに、今後も新たに同定診断される動物疾患を本研究計画に加えていく予定である。
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