研究課題/領域番号 |
17H03931
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松脇 貴志 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20447361)
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研究分担者 |
角田 茂 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80345032)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | GnRH / プロスタグランジン / GCaMP |
研究実績の概要 |
1. GnRH遺伝子の最終エクソンとCre遺伝子をT2A配列で挟むことで、これらの2遺伝子をバイシストロニックに発現するコンストラクトを作成した。現在この配列のssDNAとガイドRNAおよびCasタンパクを用いたCRISPR-Cas9方により、GnRHニューロン特異的にCreタンパクを発現するKnock-Inラットを作成中である。 2. 新規に購入した埋込型の蛍光顕微鏡を用い、アデノ随伴ウイルスにより脳内に遺伝子導入したGCaMP6fのタンパクが発する蛍光を検出することに成功した。今後、1で作出したラットの脳にCre依存的にGCaMP6fを発現する遺伝子配列を導入した後に、この条件を用いてGnRHニューロンの興奮を蛍光で検出することを目指す。 3. GnRH/LHサージを誘起するプロスタグランジン種を同定するため、発情前期のラットの視床下部を12時と15時の2回に分けて採取し、種々のプロスタグランジン合成酵素の遺伝子発現量をqPCRで解析した。その結果PGE2, PGD2, PGF2αの合成酵素の発現量はいずれも時刻により変化しておらず、これらのプロスタグランジンの量的な変動がサージを引き起こす可能性は低いことが示された。 4. さらに微小脳血管特的にPGE2を発現するマウスを用い、PGE2が脳内で働く機構を詳細に検討した。PGE2は感染時に中枢で高濃度となり、間脳視索前野に作用して発熱を誘起する。これまでは脳全域で発現したPGE2が同部位に働くのか、この反応は視索前野で局所的に起こるものなのか知られていなかった。本研究の結果、感染性の発熱が脳室内に分泌されるPGE2濃度とは無関係に、しかし局所的なPGE2発現量と比例して引き起こされることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在プロスタグランジンの格受容体特異的な拮抗薬を脳室内投与しつつ、頸静脈留置カニューレからの連続採血を行っている。LHパルスを検出するための頸静脈カニューレ留置およびラジオイムノアッセイ系は確立されており、サンプルの個体数が一定数に達した段階で同時にLH濃度を測定する環境は整っている。 今年(H29)度導入した埋込型の蛍光顕微鏡について、脳内に遺伝子導入したGCaMP6fが発する傾向を検出することに成功しているため、こちらも順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1. GnRH-Creラットを作出し、Cre依存性に発現するGCaMP6fをAAVベクターによって脳内に導入する。その後埋込型顕微で蛍光すなわちGnRHの興奮状態を観察する。 2. 野生型ラットの頸静脈および脳室内にそれぞれシラスコンカニューレとステンレスカニューレを留置する。頸静脈からの連続採血1時間後に頸静脈からリポ多糖(LPS)、脳室から種々のプロスタグランジン拮抗薬を投与する。採取した血中のLH濃度を測定し、LPS投与によるLHパルスの抑制おける各々のプロスタグランジンの役割について検討する。 3. GnRH/LHサージが発生する発情前期の昼頃に各々のプロスタグランジンの拮抗薬を脳室内投与し、LHサージに与える影響を観察する。 4. 各々のプロスタグランジン合成酵素について、NeuNやPECAM、Iba-1などの各種細胞マーカーとの二重免疫染色を行うことで、その発現領域と発現細胞腫を同定する。さらに、各プロスタグランジンの受容体についても同様の解析を行う。
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