研究実績の概要 |
酵母細胞でのホスファチジルイノシトール4リン酸(PtdIns(4)P)を標識する技術を開発し,哺乳類培養細胞におけるオートファゴソームでのPtdIns(4)Pのナノスケールでの分布解析を行った.哺乳類培養細胞には,Huh7細胞を用いた.オートファジーの誘導には,オートファゴソームと後期エンドソームの融合を抑制するBafilomycin A1存在下に,オートファジー誘導を制御しているmTOR蛋白質の抑制剤であるTorin1を処置することにより行なった.Bafilomycin A1存在下にTorin1を処置することにより,オートファジー誘導のマーカーであるLC3の発現が有意に促進されていることがわかる.Torin1とBafilomycin A1処置Huh7細胞を急速凍結し,細胞のレプリカを電子顕微鏡で観察すると,オートファゴソームの特徴である膜内粒子のない二重膜が多数観察された.抗PtdIns(4)P抗体で標識すると,オートファゴソームの二重膜のうち, 内膜,外膜共に内葉(細胞質側)にPtdIns(4)Pが局在することがわかった.また,オートファゴソームのマーカーであるLC3B, GABARAPL1, GABARAPL2, Rab7との二重標識を行った.LC3B, GABARAPL1, GABARAPL2およびRab7はPtdIns(4)Pと同様にオートファゴソームの外膜,内膜共に内葉に局在が確認できた.しかしながら,予想に反し,PtdIns(4)Pの標識はLC3B,GABALAPL1およびGABALAPL2とは共局在しなかった.これに反し,Rab7の標識はPtdIns(4)Pとオートファゴソーム上で共局在した.Rab7はオートファゴソームの形成の後期に局在することが知られており,PtdIns(4)Pはオートファゴソームの形成後期に発現することが示唆された.
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