研究課題
申請者らは脂質の超微局在を明らかにすることが、膜脂質の機能を解明するために必須であると考え、そのための方法開発に注力してきた。その結果、急速凍結・凍結割断レプリカ標識法(QF-FRL: Quick Freezing & Freeze-fracture Labeling)によって膜脂質を特異的に標識することが可能であることを示し、生体膜脂質の二次元的分布を定量的に解明することに成功した。申請者はこれまでに哺乳類培養細胞での脂質を中心に、その微細分布を明らかにしてきた。本研究では、酵母細胞、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)およびマラリア原虫(Plasmodium falciparum)における脂質の微細局在について検討した。その結果、酵母細胞の細胞膜ではイノシトールリン脂質の一つであるPI(4,5)P2が細胞膜の陥入領域に集積することがわかり、さらにその前駆体であるPI(4)Pの産生はPI 4-kinaseであるPik1pおよびStt4pの両方に依存することが明らかになった。一方、T. gondiiにおいてはラフトの主成分である糖脂質のGM3が細胞膜には局在せず、細胞内のinner membrane complexの管腔側のleafletに特異的に局在することがわかった。また、P. falciparumにおいては、糖脂質GM3は細胞膜の外葉とともに内葉にも局在することがわかった。このことは、ラフトドメインが細胞膜の外葉に存在する哺乳類細胞とは異なり、T. gondiiやP. falciparumの寄生虫ではラフトドメインの局在が異なり、その運動、宿主細胞への進入および宿主細胞からの脂質の搾取においてラフトドメインが寄生虫に特異的な役割を担っていることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
European Journal of Cell Biology
巻: 100 ページ: 151149~151149
10.1016/j.ejcb.2020.151149
Hitochemistry and Cell Biology
巻: - ページ: -
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranes
巻: 1862 ページ: 183416-183416
10.1016/j.bbamem.2020.183416