研究課題/領域番号 |
17H03938
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
音井 威重 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (30311814)
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研究分担者 |
竹本 龍也 徳島大学, 先端酵素学研究所(オープンイノベ), 教授 (30443899)
香月 康宏 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90403401)
谷原 史倫 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 特任助教 (90754680)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 人工染色体 / ブタ / 異種移植 / GalT / HLA A24 |
研究実績の概要 |
近年、ドナー不足を解消する手段としてブタの臓器・組織を用いる異種移植に関心が高まっている。しかし、移植後1週目以降の急性・慢性拒絶反応による臓器機能不全を克服しなければならない大きな課題がある。本研究は、遺伝子搭載サイズに制限がない人工染色体技術と、任意のゲノムを部位特異的に切断し変異を挿入(ノックアウト)できるゲノム編集技術を組み合わせて、拒絶反応の少ない異種移植用の遺伝子改変ブタを作製することを目的とした。実際には、日本人に多いヒトHLA A24遺伝子を人工染色体で挿入し、かつ異種抗原であるGal転移酵素遺伝子をノックアウトすることにより、拒絶反応の少ない異種移植用のHLA 挿入GalT-KO ブタを作出する。本年度は、抗原関連遺伝子(GalT)を標的としたCRISPR-Cas9システムの構築(guide RNAの設計)を行い、設計したguide RNA(gRNA)の遺伝子改変効率をブタの体外受精胚を用いて確認し、高効率なgRNAを用いて遺伝子改変ブタの作製を試みた。その結果、胚移植後2頭が妊娠し合計6頭の産仔を得ることができ、第一世代でGalTホモ欠損ブタ作製に成功したほか、異種抗原となるαGalの消失が組織染色により確認できた。一方、ヒト人工染色体ベクターおよびマウス人工染色体ベクターをブタ線維芽細胞に微小核細胞融合法を用いて導入したところ、ヒト人工染色体ベクターでは1クローン、マウス人工染色体ベクターでは3クローンの薬剤耐性クローンが獲得できた。細胞をパッセージして増殖性がみられたクローンはヒト人工染色体ベクターでは1クローン、マウス人工染色体ベクターでは1クローンであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の胚盤胞のシークエンス解析結果より、今回解析した7種類のgRNA中の4種のgRNAが高い編集導入率を示すことがわかった。さらにシークエンスデータから、変異導入率の高かった4種類のgRNAの中でもホモ変異体の作製可能なgRNAを3種にしぼり、GalTノックアウト豚作製を行った。胚移植の結果、gRNA#4およびgRNA#6を用いた場合には妊娠豚を得ることができなかったが、gRNA#10を使用した胚を移植した場合、移植頭数2頭中2頭が妊娠し、合計6頭の産仔を得ることができた。得られた仔豚のシーケンス結果をTIDEで解析した結果、6頭中1頭は野生型であり、残りの5頭はGalTホモ欠損である可能性が高いことが示された。野生型および鑑定殺したGalTノックアウト豚の心臓のαGal染色した結果、野生型の心臓ではGS-IB4-Alexa488によりαGalが染色されたのに対し、GalTノックアウト豚ではαGalが検出されなかった。ヒト人工染色体ベクターおよびマウス人工染色体ベクターをブタ線維芽細胞に微小核細胞融合法を用いて導入したところ、ヒト人工染色体ベクターでは1クローン、マウス人工染色体ベクターでは3クローンの薬剤耐性クローンが獲得できた。細胞をパッセージして増殖性がみられたクローンはヒト人工染色体ベクターでは1クローン、マウス人工染色体ベクターでは1クローンであった。今後、それぞれ1クローンずつについて、FISH解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
GalTホモ欠損と判定した5頭のノックアウトブタにおけるGal抗原のオフターゲットを評価し、最適のgRNAを確定する。一方、ブタ細胞上のGal抗原をノックアウトした後も,non-Gal 抗原に対する自然抗体の反応による遅延型拒絶反応が問題となっている。non-Gal 抗原のうち,N-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)はブタ血管内皮細胞上に発現する糖鎖として知られており、ヒトはこのNeuGc抗原を持たないため,ブタ-ヒト間異種移植ではNeuGcを標的とした抗体性拒絶反応の懸念がある。本年は、α-Gal 抗原とNeuGc抗原をどちらも発現しないGalT/CMAHのダブルノックアウト豚の作製を試みる。人工染色体については、増殖性がみられたヒト人工染色体ベクター1クローン、およびマウス人工染色体ベクター1クローンそれぞれについてFISH解析を進め、一部はドナー核として使用し除核したブタ卵母細胞との融合による体細胞クローン胚の発育能を検討する予定である。
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