研究課題
ES細胞は、胚盤胞期の将来胚体を形成する内部細胞塊から樹立された細胞であり、胎盤などの胚体外組織への分化能を失った多能性細胞であると信じられてきた。しかし、最近の研究からES細胞には非常に低い割合で内在性のレトロウイルスであるMuERV-Lを発現する細胞集団が存在することが報告され、これらの細胞集団は全能性を有すると結論されている。本研究では、MuERV-L陽性細胞を可視化し、MuERV-L陽性細胞を効率よく誘導する方法を開発することとMuRV-L陽性細胞に含まれる真の全能性細胞を同定することを目的として研究を行った。今年度は、①KSRの類似品であるSSR(StemSure Serum Replacement)を用いた場合にも、MuERV-L陽性細胞が効率よく誘導されること、②KSRで誘導したMuERV-L陽性細胞はSSRを用いて誘導したMuERV-L陽性細胞と遺伝子発現パターンが類似していること、③アスコルビン酸はES細胞においてMuERV-L陽性細胞への変換を促進し、インシュリンはこの変換を抑制すること、④MuERV-L陽性細胞への変換にはエネルギー代謝経路が解糖系から酸化的リン酸化へと変化することが重要なこと、⑤MuERV-L陽性細胞では、電子密度が高く分厚い内膜を持ったミトコンドリアが多いこと、⑥約4割のMuERV-L陽性細胞では、卵細胞に特異的なLD (Lipid droplet)を有すること、を明らかにした。以上のことから、本研究ではMuERV-L陽性細胞を効率良く誘導する方法の開発とMuERV-L陽性細胞の新たな特徴を見出すことに成功した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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