研究課題/領域番号 |
17H03942
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 利治 名古屋大学, アジアサテライトキャンパス学院(農), 特任教授 (30227152)
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研究分担者 |
中松 豊 皇學館大学, 教育学部, 教授 (00456617)
千葉 壮太郎 名古屋大学, アジアサテライトキャンパス学院(農), 特任准教授 (70754521)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 内部寄生バチ / ポリドナウイルス / hyperspread cell / 血球 / 包囲作用 / メラニン合成 |
研究実績の概要 |
寄主との密接な関係を持つ内部寄生蜂の寄主特異性は、共生ウイルス(ポリドナウイルス:PDV)や毒液の遺伝子の違いによることがわかってきている。しかし、寄主特異性に関与するPDVと毒液の機能的な類似点や相違点を若齢にしか寄生できない寄生バチ(Cotesia ruficrus)と終齢まで寄生可能な特性を持つ寄生バチ(Cotesia kariyai)間で明らかにすることで、進化における種分化の仕組みを明らかにしていく。今年度は主にPDVにおけるゲノム解析を行った。 1.以前行った実験結果ではかなり共通遺伝子を持っていることが予測されていたが、ゲノムの共通性を解析したところ、あまり共通してない可能性が見えてきた。 今後はPDVゲノムはagarose電気泳動で様々な大きさのセグメントに分かれることから、それぞれのセグメントごとの解析を行うことで重複している配列を明らかにし、ゲノム配列の類似点と相違点を明らかにする。 2.寄主側の反応として、PDVの作用によって血球種のHSC(Hyperspread cell)がいなくなり機能を失うことはすでにあきらかになっていて、寄生成功にはこの細胞が大きく関与していると思われている。そこで、まずは寄生されていない個体でのHSCの動態の検討を行った結果、この細胞の再利用は行われず、皮膚を構成する表皮細胞から供給されている可能性が示されている。これがPDVの作用でどのように変わるかなどを検討することで、PDVが特異的にこの細胞の機能を消失させている可能性を明らかにする。 3.アワヨトウに近縁な種であるキヨトウおよび作物の重要害虫であるハスモンヨトウやオオタバコガに寄主範囲を広げるために、材料採集のための野外調査を行い飼育体制の確率を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種寄生バチのポリドアウイルスには似たような配列が多く存在すると当初の予測と大きく食い違っているような結果を得たため、ウイルスのそれぞれのセグメントの分離を行い、まずそれぞれのセグメントの類似性を検討することから始める。セグメント間の類似性の検討には時間が若干かかるが、それでより2種間においても正確な比較を行える。
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今後の研究の推進方策 |
1.PDVのゲノムの解析の結果、Cotesia ruficrusとCotesia kariyai にはあまり共通の遺伝子が存在しない可能性が示されたことから、セグメントに分けることでそれぞれのセグメントの遺伝子配列を明らかにして、重複している遺伝子および違う遺伝子配列などを明らかにする。 2.寄主側のHyper Spread Cell (HSC)血球は、異物に接着することで異物の周りにメラニンを沈着させ他の血球に対するランドマークとして働くことが分かってきたが、血球細胞の中での比率も低く異物に接着することで認識できる細胞であることから体内で他の血球と識別しにくく、細胞で発現する遺伝子がまだ全く分かっていない。また今回皮膚細胞から生産されている可能性が示されてことから、皮膚細胞の初期培養等の検討も行うことでこの出所を明らかにして、PDVの感染による影響を明らかにしていく。 3.高校生物の教材化についても、いろいろな材料の検討を行い細胞性免疫に適した材料も検討を行う。手軽に使える材料として短時間で見やすいものの検討を行う。
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