研究課題/領域番号 |
17H03943
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大門 高明 京都大学, 農学研究科, 教授 (70451846)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カイコ / 脱皮 / 変態 / 幼若ホルモン / ゲノム編集 / モザイク |
研究実績の概要 |
本課題では、蛹変態・成虫変態の発生プログラムの全貌を明らかにすることを目的とし、カイコにおける蛹化・成虫化のマスター遺伝子の機能を解明するとともに、 幼若ホルモンによる蛹化・成虫化のマスター遺伝子の制御機構の解明を行う。平成29年度は、主に、これまでに樹立したKr-h1(変態抑制遺伝子)、broad(蛹化誘導遺伝子)のノックアウトカイコ系統および遺伝的モザイク系統の表現型解析、そして遺伝子発現解析を行った。 Kr-h1遺伝子:Kr-h1は幼若ホルモン受容体によって直接転写誘導される最初期遺伝子であり、幼若ホルモンの抗変態作用の中核を担うとされる転写因子である。本年度は、Kr-h1ノックアウト系統の幼虫は3齢または4齢から早熟変態すること、Kr-h1は細胞自律的に機能して変態を抑制することを明らかにした。Kr-h1を完全に欠損し早熟変態した幼虫の多くが正常に蛹化・羽化した(ただし体サイズは小さくなる)。また、Kr-h1の早熟変態は幼若ホルモンアナログであるメソプレンによって抑制された。これらの事実は、従来考えられてきた JH -> Met -> Kr-h1という経路以外にも、JHシグナリングを担う経路が存在することを強く示唆している。 broad遺伝子:broadは蛹コミットメントとともに発現し、蛹化に必要な遺伝子群を誘導する転写因子である。broadのノックアウト系統は前蛹期に致死すること、broadのモザイク個体ではbroad欠損部位の真皮細胞は幼虫のままに留まって幼虫/蛹モザイク、そして幼虫/成虫モザイクとなることが明らかになり、broadは真皮細胞において蛹変態に必須であることが明らかになった。興味深いことに、broadノックアウト個体の成虫原基では、蛹あるいは成虫への変態が観察され、変態の制御は成虫原基とgeneralな真皮細胞とでは大きく異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度は、Kr-h1とbroad変異体の表現型解析および遺伝子発現解析に注力し順調に成果を挙げることができており、大きな問題は生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究遂行上の大きな問題は生じていないため、予定通り研究計画を進めていく予定である。
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