研究実績の概要 |
本課題では、蛹変態・成虫変態の発生プログラムの全貌を明らかにすることを目的とし、カイコにおける蛹化・成虫化のマスター遺伝子の機能を解明するとともに、幼若ホルモンによる蛹化・成虫化のマスター遺伝子の制御機構の解明を行っている。 平成30年度の成果の概要は以下の通りである。 <Kr-h1> Kr-h1はJH-Met複合体によって直接転写誘導される変態抑制遺伝子である。Kr-h1ノックアウトカイコにおける遺伝子発現解析の結果、(1)Kr-h1は自身を正に制御すること、(2)Kr-h1ノックアウト系統でも若齢期にbroadの早期誘導が見られないこと、(3)成虫期において成虫化マスター遺伝子E93の転写量が顕著に増加すること、などが明らかになった。さらに、幼若ホルモンの抗変態作用の遺伝子基盤の解明に向けて、Metノックアウトカイコ、Kr-h1ノックアウトカイコ、JHAMTノックアウトカイコ、CYP15C1変異体の若齢期でのmRNA-seq解析を行い、現在データ解析を行っている。 <broad> broadはpupal specifierとも呼ばれ、幼虫が蛹に変態するために必要な転写因子であり、蛹化プログラムが実行される時期に特異的に発現する。カイコにおいてbroadの過剰発現実験を行うために、3つのbroadアイソフォームごとにUASトランスジェニックカイコ系統を樹立した(UAS-Br-Z1, UAS-Br-Z2, UAS-Br-Z4)。これらの系統をGAL4系統と交配することによって、(1)通常broadが発現しない若齢期に強制発現させる実験、(2)broadのアイソフォームごとの機能を調べる実験等が可能となった。
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