研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,形態形成関連遺伝子の発現と機能の解析,および,成虫器官形成と関わる変態制御機構の解析を進めた。翅形成関連遺伝子のエンハンサートラップ系統を用いた発現解析を進めるとともに,RNAi法による機能解析を並行し,翅に加えて外部生殖器などの成虫器官形成への関与と時空間的な発現動態を明らかにした。また,体節形成に関わる遺伝子の遺伝子ノックアウト機能解析から,昆虫におけるペア・ルール遺伝子の祖先的な機能について示唆が得られた。体節形成自体は後胚期以前に行われるが,本研究の過程で,コオロギにおけるゲノム編集技術の導入や最適化をさらに進めることができた。昨年度のマイクロホモロジー依存的なノックイン技術に加えて,ssODNを利用した遺伝子改変技術の基盤を整えたことにより,解析の幅が広がった。遺伝子発現・機能に関する成果については,国内学会発表を行い,現在投稿準備中である。一方,カイコなどの研究から変態制御のマスター遺伝子とされ,それぞれ幼虫,蛹,成虫の形質発現に関わるKr-h1, Broad-Complex, E93遺伝子が,コオロギでも変態制御に関係していることを明らかにした。さらに,蛹化のマスター遺伝子とされるBroad-Complex遺伝子の発現のタイミングから,不完全変態類の終前齢-終齢幼虫期が,完全変態類の「蛹」に対応するステージであることが示唆された。研究を通じ,変態制御のシステムと,翅形成など成虫器官形成に関わる遺伝子制御の関係解明のための鍵となる情報と技術的基盤が得られた。
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