研究課題/領域番号 |
17H03947
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
徳田 誠 佐賀大学, 農学部, 准教授 (60469848)
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研究分担者 |
笠原 博幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00342767)
鈴木 義人 茨城大学, 農学部, 教授 (90222067)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オーキシン / サイトカイニン / 昆虫 / 植食性 / ゴール形成性 / 進化 |
研究実績の概要 |
昆虫における植物ホルモン合成能の進化的起源をさぐる目的で、クモ綱(クモ目)や昆虫綱の様々な目における植物ホルモンオーキシンとサイトカイニンの内生量を調査した。その結果、オーキシンはクモ目、トンボ目、カゲロウ目、バッタ目、ナナフシ目、シロアリ目、カメムシ目、コウチュウ目、トビケラ目、チョウ目など、分析したすべての分類群で確認された。一方、植物体内で活性を持つ2種類のサイトカイニンiP(前駆物質iPR)、tZ(前駆物質tZR)のうち、iPあるいはiPRは多くの昆虫類で確認されたが、tZあるいはtZRは植食性の目であるバッタ目やナナフシ目を含む多新翅類ではほぼ認められず、カメムシ目の一部の分類群や、完全変態昆虫でのみ、ある程度の内生量が検出された。興味深いことに、植食性の目の中でも、ゴール形成性が進化している分類群では、tZあるいはtZRを一定量体内に保持している傾向が認められた。一連の結果から、節足動物は進化のかなり早い段階でオーキシン合成能を獲得していた可能性があること、一部の植食性昆虫は、オーキシン合成能を増強して摂食の際に利用している可能性があること、及び、tZR/tZ合成能は、昆虫の中の一部の分類群でのみ獲得されている可能性が高いことなどが判明した。また、ホソヘリカメムシ幼虫の体内にはIAAが高濃度で含まれており、花期にホソヘリに吸汁されると、ツルマメでもダイズと同様の反応がみられた。両種ともホソヘリに吸汁された種子で発芽率の低下が認められ、全般的にツルマメよりもダイズの方が高かった。以上から、吸汁によるこれらの生理的変化は昆虫側の積極的な操作によるものであり、その結果植物側に負の影響が及んでいること、および、ダイズでより感受性が高いことなどが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一部の実験において、申請時の予備調査の結果が再現されないという問題が生じたため、再度解析をやり直した。 それに伴い、予算の一部を繰越申請し、当初2017年度に実施予定であった一部の実験を2018年度に後ろ倒しにする必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度に実施予定であった一部の実験を、繰越申請により翌年度に実施することとした。繰越予算により2018年度に技術補佐員を1名雇用し、2018年度に実施予定の実験と並行して、2017年度に実施予定であった実験も遂行することにより、当初の計画通りに研究を進めることとした。
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