研究課題/領域番号 |
17H03949
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中川 智行 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (70318179)
|
研究分担者 |
清水 将文 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60378320)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | レアアース / 植物共生細菌 / メチロバクテリウム属細菌 |
研究実績の概要 |
REE依存的生育を示すC1微生物のスクリーニングし、その特徴とREE応答について解析した。根粒植物を中心に細菌群をターゲットに75株のメチロバクテリウム属細菌を獲得した。そのうち、15株が低栄養環境下でレアアースであるSmに対して応答し、コロニー系が増大した。そのうち、もっともSmに対してコロニー径が増大したM. zatmanii GM97株を選抜し、GM97株のゲノム配列を部分的に決定した。本株はREEであるLa特異的にメタノールを代謝でき、その鍵遺伝子群xoxF1オペロンおよびメタノール代謝酵素遺伝子群を保持していた。しかし、Sm依存的なメタノール代謝は示さず、GM97株のSmに対する細胞応答はXoxF1を含めたメタノール代謝系ではなく、異なる代謝系をターゲットとした新たなREE応答であることが考えられた。 このようにメタノール代謝以外にレアアースに応答する新たな代謝系が存在する可能性を示すことができ、またその応答が植物葉上に生息するメチロバクテリウム属細菌が持つことから、植物共生細菌の共生メカニズムにおいてREEが関与する新たな可能性が考えられた。 また、ダイズ等の根粒作物の生育に欠かせない根粒菌Bradyrhizobium属細菌のレアアース応答について解析し、Bradyrhizobium属細菌がレアアース依存的メタノール代謝を行うことを示すことができた。またのそのターゲットはメタノール代謝の初段階酵素メタノール脱水素酵素で、その酵素科学的諸性質について証明することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、新たにREE応答細菌群、特に根粒植物などから75株のメチロバクテリウム属細菌を獲得した。そのうち、15株が低栄養環境下でレアアースであるSmに対して応答することを示し、もっともSmに対してコロニー径が増大したM. zatmanii GM97株のゲノム配列を部分的に決定できた。本株のあらたなSmに対する細胞応答を見出すことができ、その植物促進技術への応用においてREEが鍵因子である可能性を持つものと考えている。一方、本年度は、これらあたらに獲得したメチロバクテリウム属細菌群のREEに対する応答を解析できたものの、その植物生育促進に関する評価を行うことができなかった。この点に関しては次年度以降の課題である。 また、植物共生細菌のうち、根粒菌においてもREE依存的メタノール代謝の存在を証明することができ、レアアースと根粒形成の関連性が存在する可能性を示すことができた。これら根粒菌のレアアースによる根粒形成機構への寄与、さらにはその存在が明らかとなった場合のその分子機構の仕組みを遺伝子・分子レベルで証明することで、今後、根粒菌を利用した作物生育促進技術の開発において新たな展開を生む可能性を秘めているものと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今回、多数のREE応答細菌群を獲得することができたが、その植物生育促進能を評価する系を完全に構築することができなかった。来年度、植物生育促進能力の評価系の構築を目指し、研究を進める。 また、評価系の構築と並行して、REEを中心とした植物共生細菌群のREE応答、ならびにその機能発現のメカニズムを引き続き証明していく。特に植物から放散されるVOCであるメタノールを中心とした植物共生系に着目し、REEにより活性化されるメタノール代謝の制御機構を詳細に解析し、メチロバクテリウム属細菌のみならず、植物との共生関係がそれほど明らかとなっていないメタノール酵母のメタノール代謝の制御機構も含め、VOCメタノールとそのしか微生物群の機能を明らかにしていくことで植物生育促進技術への応用の可能性を示していく。 さらには根粒菌のREE応答の詳細を示すことも含めて、本研究課題の遂行に向けた研究を進めていく。
|