研究実績の概要 |
本研究は、超低投入水稲栽培システムのメカニズム解明と応用技術開発を目的とするものである。今年度から予定通り研究圃場において水稲栽培実験を行い、データの蓄積を開始しているが、初年度であるため、研究環境の整備および研究全般の流れや問題点のチェックを特に注意して行った。今年度に行った研究内容および実績は次の通りである。 ①水田土壌および水稲における養分・元素(C,N,P,K,Ca,Mg,Fe等)動態を測定し、詳細に動態を解明してバランスシートを作成した。②植物(緑肥、雑草、水稲)の元素保持・供給能力を明らかにし、適用条件や範囲を明確化した。室内インキュベーション実験を行ったところ、土壌微生物による緑肥や雑草の分解は湛水後1週間目にピークとなり、無機塩類の放出や有機酸の生成が生じることが明らかになった。また雑草が混入することで窒素供給速度が低下し、緩効的になることが明らかになった。③作物学的見地から水稲生育・収量・品質について詳細なデータを得た。超低投入区は、化学肥料区より初期生育がやや遅れたが、後半の生育が順調に推移すること、土壌からの窒素無機化(アンモニア生成)が後半まで持続していたことが、安定生産メカニズムの一因であると考えられた。④雑草中のエンドファイト(植物共生微生物)の検出に関する研究を始めるための準備を開始し、次年度開始直後にすぐ実験が開始できるようにした。⑤水田から発生する地球温暖化ガス(CO2、CH4、N2O)の発生量を定期的に測定を行い、超低投入水田からは、多量のCH4ガスが発生しており、環境保全のために栽培管理システムの修正が必要であることが明らかになった。この炭素源は緑肥や雑草由来と考えられる。⑥上記の研究成果の一部について学会発表を3課題行い、広く情報発信を行った(日本土壌肥料学会関西支部会、日本作物学会四国支部会)。
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