研究課題
多摩川河川敷の環境の潜在的な可能性の自然科学的な研究と河川敷のあり方についての社会的な合意形成の手法の研究を統合して新たな河川管理の方向性を見いだすことを目的として、総合的な研究を行ってきた。研究最終年度の2019年10月の台風19号によって、多摩川において大規模な出水が発生し、多数の被害が発生した。羽村市宮ノ下運動場をはじめとする多くの河川敷グランドが土砂の堆積や基盤の侵食などの被害を受けて、長期間使用不能になった。多摩川の自然保護のシンボルであるカワラノギクの最後の野生個体群は全滅し、学名に多摩川を冠するカワラニガナの個体群もわずかに2つの小さい個体群を残して消滅した。出水によって礫河原が広がったものの、これらの礫河原固有種は回復せず、外来種の繁茂が目立った。このように、多摩川河川敷の環境の潜在的な可能性は大幅に低下しており、本来の礫河原に戻すことはきわめて困難である。調査結果をビジュアルな報告書にまとめて市民に読んでいただいたうえでアンケートを行った。多くの市民は河川敷を礫河原に戻すことを望んでおり、その困難性についての理解を得ることはかなり困難であることが判明した。自然科学の研究成果を市民が活用するためには研究成果を単にわかりやすく示すだけでなく、印象的かつ象徴的に示すようなさらに踏み込んだ示し方が必要である。アンケート結果を整理して、河川管理者である国土交通省京浜河川事務所と地元自治体である福生市とあきる野市に報告したところ、行政の反応にも多様性があることが見て取れた。研究全体を通して、自然科学的な研究成果を基に社会的な合意形成を行っていくことのむずかしさと必要性を再確認した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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ランドスケープ研究 増刊 技術報告集
巻: 11 ページ: 12-15