研究課題/領域番号 |
17H03962
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
橋本 義輝 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (00323254)
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研究分担者 |
小林 達彦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70221976)
白木 賢太郎 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90334797)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微生物 / 酵素 |
研究実績の概要 |
各種アミド化合物の工業生産菌であるPseudomonas chlororaphis B23株とRhodococcus rhodochrous J1株のニトリル合成・分解・分解代謝機構は高い潜在能力を持つと期待される。本研究では、ニトリル分解に関わる酵素・機能性タンパク質・プロモーターの機能を詳細に解明することを目的とする。 各種ニトリル分解に関わる酵素群の中で、(他の酵素に関しては継続して研究を進めているが)現在、特にB23株ニトリル水和酵素のアクセサリータンパク質に関して得られている成果について以下に記載する。 ニトリル水和酵素構造遺伝子(nhpAB)、ニトリル水和酵素構造遺伝子および下流遺伝子(nhpABC)を大腸菌で発現させ、それぞれから酵素(以下、酵素(AB)および酵素(ABC)とする)の精製を行った。精製した酵素(AB)は無色、酵素(ABC)は淡緑色を呈し、どちらの酵素も、SDS-PAGE上で約25 kDaの単一バンドであり、N末端アミノ酸配列の決定によりα、β両サブユニットで構成されていた。ゲルろ過で分子量を決定した結果、酵素(AB)は2量体、酵素(ABC)は4量体であった。活性測定を行った結果、酵素(ABC)のみ高いニトリル水和活性を示した。活性に必須のFeの含量は、酵素(ABC)はαβあたり0.91、酵素(AB)は0.21であった。分光学的解析を行った結果、両者の二次構造、Feの配位が互いに異なることが示唆された。以上の結果から、酵素(ABC)をFeが配位したホロ酵素、酵素(AB)をアポ酵素と同定し、NhpCは本酵素の翻訳後の活性発現に関与するアクセサリータンパク質であり、B23株では、Co型ニトリル水和酵素の翻訳後成熟化に関わるSelf-Subunit Swappingシャペロンとは異なる機構でニトリル水和酵素は翻訳後活性化されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニトリル水和酵素の下流に存在する遺伝子(nhpC)を含むニトリル水和酵素遺伝子(nhpAB)の発現プラスミドではFeが配位したニトリル水和酵素のホロ酵素、nhpCを含まないニトリル水和酵素遺伝子(nhpAB)の発現プラスミドではニトリル水和酵素のアポ酵素が生成することを実証し、NhpCが本酵素の翻訳後の活性発現に関与するアクセサリータンパク質であることを同定することに成功した。 J1株ニトリル水和酵素の翻訳後修飾において、Self-Subunit Swappingシャペロン、金属シャペロン、酸化反応触媒の3つの機能を持つeタンパク質についても、部位特異的変異法によりそれらを別のアミノ酸に置換した複数の変異タンパク質の発現プラスミドを構築するなど、他の実験も進めており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ニトリル水和酵素の翻訳後活性発現に関わるNhpCが、(ウレアーゼ成熟過程で重要なNi取り込みに関わる)ウレアーゼアクセサリータンパク質、(ヒドロゲナーゼ成熟過程のNi取り込みに関わる)ヒドロゲナーゼアクセサリータンパク質、(Co含有コバラミンの生合成に関わる)CobWと弱いながらも相同性を示すことが判明した。部位特異的変異法により相同性を示す領域の変異NhpCアクセサリータンパク質を作成し、それらの諸性質解明を行い成熟過程におけるFeの取り込み機構を明らかにする計画である。 また、J1株Self-Subunit Swapping機構の詳細な解析およびJ1株ニトリル水和酵素の翻訳後修飾機構の解析についても、研究実施計画に基づき研究を行う予定である。
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