研究課題/領域番号 |
17H03963
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川北 一人 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90186065)
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研究分担者 |
竹本 大吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30456587)
小鹿 一 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50152492)
佐藤 育男 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70743102)
千葉 壮太郎 名古屋大学, アジアサテライトキャンパス学院(農), 特任准教授 (70754521)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エリシター / ジャガイモ疫病菌 / 卵菌 |
研究実績の概要 |
植物は、微生物の構成成分を認識することで病害抵抗反応を誘導する。これまでに、抵抗反応を誘導する微生物由来の物質(PAMPエリシター)が、細菌(フラジェリンなど)や糸状菌(キチンなど)から単離されている。一方、Phytophthora属(疫病菌)やPeronospora属(べと病菌)など、重要病原菌を含む卵菌のPAMPについての研究は限られている。申請者らは、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)菌体から、病害抵抗性応答である活性酸素生成や抗菌物質(ファイトアレキシン)生成を誘導するエリシター物質を精製した。精製の過程で、活性酸素生成活性とファイトアレキシン生成活性が別の画分で検出され、それぞれセラミド化合物およびエイコサペンタエン酸関連化合物であることが明らかとなった。本年はこれら2つの物質にたいするシロイヌナズナの応答を調査した。11種の抵抗性関連遺伝子の発現誘導活性をセラミド化合物およびエイコサペンタエン酸関連化合物で調査したところ、発現誘導される遺伝子のパターンに差異が認められた。セラミド化合物は、イネに対してもエリシター活性を持つことが認められ、卵菌エリシターが単子葉、双子葉植物のいずれに対してもエリシター活性があることが確認された。共同研究者と、セラミド化合物およびエイコサペンタエン酸関連化合物への応答性が低下するシロイヌナズナ変異株のスクリーニングを行なっており、セラミド化合物に関しては変異株の全ゲノム解析により応答性に必須な遺伝子群の単離に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
植物は、微生物の構成成分を認識することで病害抵抗反応を誘導する。これまでに、抵抗反応を誘導する微生物由来の物質(PAMPエリシター)が、細菌(フラジェリンなど)や糸状菌(キチンなど)から単離されている。一方、Phytophthora属(疫病菌)やPeronospora属(べと病菌)など、重要病原菌を含む卵菌のPAMPについての研究は限られている。申請者らは、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)菌体から、病害抵抗性応答である活性酸素生成や抗菌物質(ファイトアレキシン)生成を誘導するエリシター物質を精製した。精製の過程で、活性酸素生成活性とファイトアレキシン生成活性が別の画分で検出され、それぞれセラミド化合物およびエイコサペンタエン酸関連化合物であることが明らかとなった。本年はこれら2つの物質にたいするシロイヌナズナの応答を調査した。11種の抵抗性関連遺伝子の発現誘導活性をセラミド化合物およびエイコサペンタエン酸関連化合物で調査したところ、発現誘導される遺伝子のパターンに差異が認められた。セラミド化合物は、イネに対してもエリシター活性を持つことが認められ、卵菌エリシターが単子葉、双子葉植物のいずれに対してもエリシター活性があることが確認された。共同研究者と、セラミド化合物およびエイコサペンタエン酸関連化合物への応答性が低下するシロイヌナズナ変異株のスクリーニングを行なっており、セラミド化合物に関しては変異株の全ゲノム解析により応答性に必須な遺伝子群の単離に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
1.シロイヌナズナのエイコサペンタエン酸無応答変異株の解析 シロイヌナズナの高感度検出系を用いたエイコサペンタエン酸への無応答性変異株のスクリーニングにより多数の候補株を得ている。そこで、得られた無応答変異株の全ゲノム解析を行い、エイコサペンタエン酸へ応答に必須な遺伝子を特定する。 2. シロイヌナズナの高感度検出系を用いたジャガイモ疫病菌由来のエリシターの精製 これまでに、12種類の病害応答性遺伝子プロモーターにルシフェラーゼを結合したシロイヌナズナ系統が作成され、卵菌のメタノール可溶性画分を処理により9系統で蛍光の上昇が確認されている。その中でAtWRKY33プロモーターを用いた形質転換体が卵菌エリシターに強く応答することが示されており、平成30年度にはキュウリ根腐病菌およびジャガイモ疫病菌の菌体抽出物からの物質の分画を行い、新規のエリシター活性をもつ画分の精製が進んだ。平成31年度はさらに精製を進め、単離されたエリシターはその構造を決定する。 3. ナス科植物を用いた高感度なエリシター活性の検出系の確立 シロイヌナズナ(アブラナ科)を用いた高感度検出系を用いて、すでに共同研究者によって疫病菌セラミド化合物の受容体候補遺伝子が単離されている。ジャガイモを含むナス科植物では、受容体候補遺伝子の明確な相同遺伝子が見いだされなかったことから、ジャガイモにおける疫病菌認識機構を明らかにするためには、ナス科植物を用いたエリシター活性の検出系の確立が必要であると考えられた。平成30年度は、ナス科植物のうちNicotiana sylvestrisのエリシター応答性の調査を行い、病害応答性遺伝子プロモーターにルシフェラーゼを結合したカセットを導入したNicotiana植物を作出した。平成31年度は、得られた形質転換体を用いて、計画1で単離したエリシターに対する応答性を調査する。
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