研究課題/領域番号 |
17H03964
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
蘆田 弘樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (50362851)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ルビスコ / 光合成 / CO2固定 / シアノバクテリア |
研究実績の概要 |
好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus elongatus BP1が光合成で利用するルビスコはSynechococcus elongatus PCC7942を含む常温性シアノバクテリアのルビスコよりも熱安定性が高く、さらにCO2識別能が1.5倍高いことを明らかにした。これは好熱性シアノバクテリア ルビスコのO2反応性が抑制されていることを意味する。このO2反応性を抑制するための好熱性シアノバクテリア ルビスコにおける構造とアミノ酸残基の同定を試みた。シアノバクテリアのルビスコは触媒部位を含むラージサブユニット8個と触媒反応には直接関わらないスモールサブユニット8個からなる16量体で機能している。T. elongatusルビスコのラージサブユニットとスモールサブユニットのどちらが低O2反応性に関わっているかを解析するために、T. elongatusルビスコとS. elongatusルビスコ間でルビスコのサブユニットをワップさせたキメラルビスコを大腸菌で発現させ、酵素特性を解析した。その結果、常温性シアノバクテリア ルビスコラージサブユニットに好熱性スモールサブユニットが会合することで、常温性シアノバクテリア野生型ルビスコよりも熱安定性が高くなるとともに、CO2識別能力も高くなった。また、逆に好熱性シアノバクテリア ルビスコラージサブユニットに常温性スモールサブユニットが会合することで、熱安定性が低くなるとともに、常温性シアノバクテリア野生型ルビスコよりもCO2識別能力が低くなった。これらの結果から、シアノバクテリア ルビスコにおいてスモールサブユニットが、熱安定性とCO2識別能力に関わることを明らかにし、O2反応性抑制に関与していることを明らかにした。これらの研究成果は、日本農芸化学会2018年度大会で発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記した通り、本研究目的であるルビスコのO2反応性抑制を施すための構造を明らかにしたことから、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに、好熱性シアノバクテリア ルビスコが常温性シアノバクテリアのルビスコよりも熱安定性が高く、さらにO2反応性が抑制されている原因がスモールサブユニット上にあることを明らかにした。そこで今後、好熱性シアノバクテリア ルビスコと常温性シアノバクテリア ルビスコ間でルビスコのサブユニットをワップさせたキメラルビスコのCO2・O2親和性や反応速度などの詳細な酵素特性を解析するとともに、好熱性シアノバクテリアのルビスコスモールサブユニットのどの構造領域がこれら特性に深く関わっているのかを明らかにするために、構造活性相関解析を行う。また、ルビスコにおけるスモールサブユニットの機能を明らかにするために、スモールサブユニットを取り除いたラージサブユニットのみから構成されるルビスコを作製し、その酵素特性を解析する。シアノバクテリア ルビスコの研究で得られたO2反応性技術を高等植物ルビスコへ応用するために、タバコ ルビスコの大腸菌機能発現系を構築し、O2反応性抑制変異を導入した変異ルビスコの酵素特性を解析する。さらに、ルビスコの活性化をルビスコアクチベースがどのように達成しているのかを明らかにするために、シアノバクテリアが有するルビスコスモールサブユニットにルビスコアクチベース様ドメインが融合した機能未知タンパク質の機能解析を行う。
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