原始好熱性紅藻のルビスコに代表されるように、高温に適応している光合成生物の利用しているルビスコは、CO2/O2反応比特異性が高い。この性質を常温で生育する植物のルビスコの機能改良に応用できれば、植物光合成の向上が可能となる。このような背景のもと、好熱性ルビスコの高いCO2/O2反応比特異性の原因を明らかにするために、アミノ酸配列と立体構造の相同性・類似性が非常に高い好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus elongatusと常温性Synechococcus elongatus PCC7942のルビスコの構造活性相関研究を行った。シアノバクテリア ルビスコは、ラージサブユニット8個とスモールサブユニット8個が会合した16量体で機能するが、好熱性シアノバクテリア ルビスコのCO2/O2反応比特異性が高い原因構造を同定するために、両ルビスコのスモールサブユニットを入れ替えたスワップ型変異体の解析を行った。その結果、好熱性ルビスコのスモールサブユニットが高いCO2/O2反応比特異性に関与していることを明らかにした。好熱性と常温性のスモールサブユニットの比較から、好熱性ルビスコ スモールサブユニットにおいて特異的に存在するC末端挿入配列が見出され、この挿入配列が高いCO2/O2反応比特異性に関与していると予想された。C末端挿入配列の欠損変異ルビスコの解析の結果、欠損によりKmCO2が増加し、CO2/O2反応比特異性が低下した。これらの結果から、好熱性ルビスコの高CO2/O2反応比特異性に、スモールサブユニットのC末端配列が関与していることが明らかになった。
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