研究課題/領域番号 |
17H03965
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
梅田 正明 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80221810)
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研究分担者 |
高塚 大知 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (70633452)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クロマチン / 細胞周期 / 植物ホルモン / DNA倍加 / ヒストン修飾 |
研究実績の概要 |
DNA倍加は核DNA量が倍々に増加する現象である。多くの植物にとって器官成長を促す重要な生理現象であり、地球上で生産される植物バイオマスの相当量はDNA倍加に依存していると言える。しかし、これまでCDK活性の低下がDNA倍加を誘導すると考えられてきたものの、そのメカニズムの解明は進んでいなかった。我々は、これまでの知見から、CDK活性とオーキシンシグナルの低下がクロマチン構造を変化させ、DNA倍加を誘導すると考えている。本研究ではこの仮説を検証し、その分子メカニズムの解明を目指している。 CDKがクロマチン構造を変化させる要因として、CDKがクロマチン制御因子をリン酸化し、その活性を制御している可能性が考えられる。そこで、CDKの基質を探索したところ、あるクロマチン制御因子がCDKによりin vitroでリン酸化されることを見出した。そこで、次にリン酸化部位の同定を試みた。CDK-サイクリンの組換えタンパク質を酵素として用いてリン酸化反応を行ったところ、質量分析により、特定のアミノ酸残基のリン酸化を確認することができた。 CDKのノックアウト変異体を入手し、セントロメア周辺のプローブを用いてFISH解析を行ったところ、変異体ではヘテロクロマチン領域のクロマチン構造が変化していることを見出した。つまり、CDKはクロマチン制御因子のリン酸化を介して、少なくともセントロメア領域のクロマチン構造を制御していることが示唆された。 一方、オーキシンについては、ヒストン修飾酵素遺伝子のレポーター系統を用いて、網羅的に発現解析を行った。その結果、シュートで発現するヒストン修飾酵素遺伝子がオーキシン応答性を示すことを見出した。また、その遺伝子が欠損するとDNA損傷に高感受性を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CDKによるクロマチン制御因子のリン酸化部位を同定することができたので、そこに変異を導入して機能解析を行うステップに進むことができた。また、CDKが実際にクロマチン構造の制御に関与していることを示す直接的な証拠を得ることができたのは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
CDKによりリン酸化されるクロマチン制御因子については、今後リン酸化部位に変異を導入し、それを植物体で発現させて、クロマチン構造やDNA倍加の表現型を観察する予定である。 ヒストン修飾酵素遺伝子に関しては、オーキシン応答性がクロマチン構造制御と関連しているかどうか、変異体を使った解析により検証する。また、変異体におけるクロマチン構造を直接的に解析する必要もある。さらに、別のヒストン修飾酵素遺伝子がDNA倍加と関連していることを見出したので、その因子の機能解析を、特に細胞周期との関連に着目して進めていく。
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