研究課題
本研究では、植物感染性線虫の感染機構において、線虫の誘引から植物への感染成立過程まで、幅広く、多種植物を用いてその分子メカニズムを解析する事を目的としている。そのために、本年度は以下研究項目を実施した。1-I: 根端誘引物質の同定では、複数のマメ科植物の液体培養液から精製を進めている。誘引物質は、煮沸耐性(蛋白質ではない)で、弱塩基性、分子量は1000Da程度であると予想しており、引き続き、様々なカラムを用いて精製を行い、順調に精製が進んでいる。1-II: 種子ムシゲルの誘引物質同定では、フラックスシードのムシゲルから、線虫誘引活性の有る画分を分画中である。NMR解析の解析により、活性画分に糖が含まれていることがわかった。1-III:ケミカルライブラリーによる誘引・忌避物質の同定では、既に候補として得られたカダベリン、及び類縁体のポリアミン類についてまとめることが出来た。根からカダベリンが放出されていること、また、濃度勾配を作って、根から外に放出されることを示すことが出来、論文として投稿した。2:線虫エフェクター蛋白質の植物での作用機構の解明(シロイヌナズナ)では、MSP7とMJD15の植物結合タンパク質の遺伝学的解析・生理学的解析をすすめた。このことにより、ペストのエフェクターがどのようにホストの細胞内で振る舞い、感染を有利に進めるのか、その仕組みの一端について明らかにした。3:線虫感染抵抗性トマトの作出とその農学的評価では、29年度中にARA6遺伝子のCRISPR突然変異体をトマトで作成したので、本年度、その線虫感染耐性効率の評価の準備を行った。
2: おおむね順調に進展している
それぞれの研究項目について、順調に研究が進捗していると考えている。特に、線虫の誘引物質としてカダベリンを同定し、根からカダベリンが放出されていること、また、濃度勾配を作って、根から外に放出されることを示すことが出来、その機能についてまとめることができた。この結果は、Nature Chemical Biologyに投稿することが出来、全体として順調に研究が進んでいると考えている。
1-I: 根端誘引物質の同定では、来年度も、引き続き、マメ科植物の液体培養液から精製を進める。1-II: 種子ムシゲルの誘引物質同定では、フラックスシードのムシゲルから、引き続き、線虫誘引物質の同定を進める。1-III:ケミカルライブラリーによる誘引・忌避物質の同定では、既に候補として得られたカダベリンについてまとめることが出来、論文として投稿したので、それをpublishの段階までもっていく。2:線虫エフェクター蛋白質の植物での作用機構の解明(シロイヌナズナ)では、MSP7とMJD15の植物結合タンパク質の遺伝学的解析・生理学的解析を、さらにすすめる。3:線虫感染抵抗性トマトの作出とその農学的評価を実施する。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Nature Plants
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