1)カナダ・オタワ大学John Pezacki教授との共同研究を行い、我々が世界で初めて合成したシゾコムニンの細胞毒性に関わる活性発現機構研究について論文発表することができた。シゾコムニンはアレルギー性肺真菌症患者の肺より採取されたスエヒロタケの培養液より単離されたアルカロイドである。本共同研究によりシゾコムニンはヒト肝臓及び肺細胞においてaryl hydrocarbon receptor (AhR)の発現を強く促進することが判明した。 2)我々はすでに2ーアリルインドール誘導体を5炭素ユニットとし、芳香族置換アルキンとの[5+2]環化付加反応により7員環が融合したインドール誘導体、シクロヘプタ[b]インドールの合成に成功した。今回、同じインドールユニットに対し、希土類金属存在下、シクロプロパン誘導体を3炭素ユニットとして反応させ、形式的な[5+3]環化付加反応を実現することに成功した。本反応で第1段階としてインドール3位にシクロプロパンユニットが反応し、続いて水素化ナトリウムを加えることにより、one-potプロセスとして8員環融合型インドール、シクロオクタ[b]インドールを生成した。 3)これまで、光学活性希土類金属錯体を触媒とする、電子豊富ジエンと電子不足アルケンとのエナンチオ選択的、触媒的不斉Diels-Alder反応の開発を世界に先駆けて行なってきた。キラルビナフチルジアミンをキラル素子としてキラル配位子を合成し希土類金属と錯体形成してきたが、十分な安定性は得られなかった。今回キラルシクロヘキサンジアミンをキラル素子とする新たな配位子を調整した。得られた錯体は安定で有り、錯体の単離、構造決定に成功し、長期保存可能であった。本触媒は不斉Diels-Alder反応に用いることができた。
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