研究課題/領域番号 |
17H03970
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
国嶋 崇隆 金沢大学, 薬学系, 教授 (10214975)
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研究分担者 |
山田 耕平 金沢大学, 薬学系, 助教 (40583232)
三代 憲司 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (60776079)
北村 正典 金沢大学, 薬学系, 准教授 (80453835)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 含窒素複素環 / 脱離基 / アシル化剤 / アルキル化剤 |
研究実績の概要 |
重金属を使用せず、C, N, Oの第2周期元素のみからなる反応剤は、毒性低減の点から創薬科学や生命科学における需要が高い。とりわけ新たな官能基変換を可能にし、化学・位置・立体選択性に優れ、安全性・安定性・経済性などの点で従前の反応剤を凌駕するものが求められている。 本研究では申請者がこれまでに解明・蓄積してきたトリアジン環をはじめとする電子欠乏性含窒素複素環化合物の合成法、物性、構造と反応特性の相関性などの知見に基づいて、そのポテンシャルを最大限に引き出すことにより様々な次世代の反応剤を開発し、更にその生命科学分野における活用へと展開することを目的とする。 3年目になる今年度は前年度の研究進捗状況に基づいて、含窒素複素環の骨格変換に焦点を当てた反応剤の活性制御と、その応用研究を行った。すなわちシアヌル酸―イソシアヌル酸互変異性化における段階的なエネルギー差に関する知見に基づいて、これを起動力としてより高い脱離性が期待できるトリアジノンやトリジンジオン骨格を持つ各種アルキル化剤や脱水縮合剤の開発を試みた。その結果、従来のアルキル化剤では進行しないような弱酸性触媒によって進行する多様なアルキル化剤(ATTACKs-R) の開発に成功した。また、温和な加熱のみによって進行する熱的パラメトキシベンジル化剤の開発にも成功した。これらのアルキル化剤は高活性でありながら、常温下に大気中での使用可能な安定性を有している点が大きなメリットである。同様の互変異性化エネルギーに基づく高活性な脱水縮合剤の開発にも成功した。さらに、トリアジン反応剤を活用した応用研究としてアミノ基を効果的な脱離基に変換した温和な置換反応を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
縮合剤については、トリアジン環上の置換基変換と骨格変換について幅広く検討し、これらの構造とπ電子不足性に基づく反応性について有用な知見を得ることができた。これにより、温和な条件下に利用できる多様な実用的なアルキル化剤、安全な酸化剤、様々な活性制御が可能な縮合剤の開発に成功した。特に、トリアジンを縮合剤として利用する場合、縮合活性を付与するカチオン性窒素置換基との組合せに基づく反応制御についても理解が進んだ。さらに親水性のポリマー縮合剤についても開発を終え,論文発表段階にある。 アルキル化剤については、高活性なカチオン性脱離基という概念の確立に加え、互変異性化エネルギーによる反応制御法の解明により、種々のアルキルカチオン種を温和な条件下に発生させることに成功した。さらに、トリアジンノン類によるカチオン種の特異的安定化能を見出し、これに端を発し反応剤開発とは異なる新しい研究テーマを立案し、別の競争的資金の採択にも至った。開発した反応剤についてはメーカーから発売に至ったものもあり、社会実装の点からも十分な成果と言える。以上より、当初の予定以上の進捗状況と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度なので、ここまでの研究成果について、必要に応じて特許出願し、学会および論文発表へとまとめる。また、開発した反応剤の応用研究として、有機合成や創薬科学はもちろん、プロセス、生命科学など幅広い分野での活用研究への展開を重点的に進める。 脱水縮合剤については。前年度に続きタンパク質や糖質などの生体分子の特異的化学修飾法や、医薬品合成への実際の活用について検討を進める。また、より効果的な求核触媒を内包する究極的縮合剤の開発も論文にまとめる予定である。酸化剤についても、昨年から改良を進めてきた、コスト、安全性などの点で実用性の高い化合物を完成させて論文、特許を経て製品化へと繋げたい。
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