研究実績の概要 |
重金属を使用せず、C, N, Oの第2周期元素のみからなる反応剤は、毒性低減の点から創薬科学や生命科学における需要が高い。とりわけ新たな官能基変換を可能にし、化学・位置・立体選択性に優れ、安全性・安定性・経済性などの点で従前の反応剤を凌駕するものが求められている。 本研究では申請者がこれまでに解明・蓄積してきたトリアジン環をはじめとする電子欠乏性含窒素複素環化合物の合成法、物性、構造と反応特性の相関性などの知見に基づいて、そのポテンシャルを最大限に引き出すことにより様々な次世代の反応剤を開発し、更にその生命科学分野における活用へと展開することを目的とする。 最終年度は、緊急事態宣言下で実験が中断するなど、特に前半は研究の進捗速度が低下したため、研究課題の収束に重点を置いた。 縮合剤開発では、トリアジンの置換基効果に関する研究として安定な炭素置換基を有する縮合剤を開発した。また、既に見出したアミド置換基をもつトリアジン縮合剤の応用的展開として、ポリアクリルアミドゲルを担体とする親水性ゲル型縮合剤の開発に成功した。従来のポリマー縮合剤で課題であった難水溶性の問題を解決できたので、今後生命科学における利用が期待される。また、トリアジンジオンはその高すぎる活性のためこれを骨格とする縮合剤は単離が困難であったが、電子供与性の高いジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いることにより安定化に成功した。この縮合剤では反応の各段階が加速され、アミド化、エステル化がともに短時間に完了することが示された。エポキシ化剤については既に報告したTriazoxと比べて、前駆体が安価且つ簡便に合成できる改良型の合成に成功した。その他、縮合剤やアルキル化剤開発の中で得られたトリアジンを基盤とする活性脱離基を活用するカルボカチオン種の新たな制御法を見出した。
|