研究課題
本年度は、本研究のテーマであるRh触媒による分子内C-H挿入反応を活用してハイブリッド型ポリフェノールのソホラフラバノン H の立体選択的合成と計算化学的手法を応用した絶対配置の決定をを達成した。まず、鍵となるジヒドロベンゾフラン環のエナンチオ選択的な構築は、Rh2(S-DOSP)4触媒を用いた分子内不斉C-H挿入反応により構築した。合成したジヒドロベンゾフラン環は、一度の再結晶により光学的に純粋な化合物として得られ、その絶対配置はX線結晶構造解析により決定した。続いてアルドール反応と続く脱水反応により、環化前駆体となるカルコン部分を構築した後、Claisen転位反応により位置選択的なプレニル基の導入を行った。続いて、オキシマイケル反応によるフラバノン環の構築を検討したがジアステレオ選択性は発現せず、フラバノン環上の立体化学は1:1であった。種々検討の結果、遠隔に存在するジヒドロベンゾフラン環上の3つのフェノール性水酸基の保護基をベンジル基からt-ブチル基へ変更すると約1 :2の選択性にてジアステレオ選択性が発現することを見出した。この事実を基にベンジル基およびt-ブチル基で保護された環化前駆体の最安定配座を計算したところ、遠隔地に存在する保護基の影響により両者に顕著な違いが見られ、環化反応に影響を及ぼすという興味深い結果を得た。得られた化合物の保護基を除去し、ソホラフラバノン H の不斉全合成を達成した。ソホラフラバノン Hの絶対配置の決定は、計算化学を活用した円偏光二色性スペクトルの予測値と合成品との比較にて行い2S体であると決定した.本研究により、合成、CDを測定と計算化学を組み合わせることで、これまで困難であった重要な課題であるハイブリッド型天然物の構造確定に強力な手段となることも見出した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (54件) (うち国際学会 7件、 招待講演 5件)
European Journal of Organic Chemistry
巻: 2020 ページ: 488~491
10.1002/ejoc.201901747
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 20191
10.1038/s41598-019-56731-1
The Journal of Organic Chemistry
巻: 84 ページ: 14227~14240
10.1021/acs.joc.9b01965
Organic Letters
巻: 21 ページ: 7841~7845
10.1021/acs.orglett.9b02833
巻: 9 ページ: 9899
10.1038/s41598-019-46312-7
Synthesis
巻: 51 ページ: 2198~2206
10.1055/s-0037-1611734
Organic Process Research & Development
巻: 23 ページ: 595~602
10.1021/acs.oprd.9b00091
HETEROCYCLES
巻: 99 ページ: 1095~1095
10.3987/COM-18-S(F)78