研究実績の概要 |
本年度は粒子径30 nm、100 nm、200 nmのTDLN標的型脂質ナノ粒子(Lipid Nano Particle: LNP)にアジュバントとして細胞内DNAセンサーであるstimulator of interferon genes(STING)経路を活性化する短鎖DNAを搭載し、免疫チェックポイント阻害剤との併用時の抗腫瘍活性を評価した。免疫チェックポイント阻害剤単独、100 nmのLNPや200 nmのLNPと免疫チェックポイント阻害剤との併用群では、20%のマウスで腫瘍の消失が認められた。一方で、30 nmのLNPと免疫チェックポイント阻害剤との併用群では80%のマウスで腫瘍消失が確認された。このことは、免疫チェックポイント阻害剤と併用することで30 nmのLNPの高いリンパ節移行性に起因するリンパ節内のがん免疫応答が機能したことを示唆している。 また、樹状細胞内の抑制因子であるindoleamine 2,3-dioxygenase 1 (IDO1)に対するsiRNAを搭載したLNPを構築し、樹助細胞における遺伝子発現抑制に成功した。LNPを用いてIDO1をノックダウンした樹状細胞をマウスリンパ腫皮下移植モデルに投与した結果、抗腫瘍活性が有意に増強した。腫瘍内の制御性T(Treg)の細胞マーカー遺伝子発現を調べた結果、有意に減少していたことから、抗腫瘍活性がTreg細胞の減少に起因することが示された。このことは樹状細胞内の抑制因子の発現を制御することで、腫瘍内Treg細胞の誘導を抑制できることを示唆している。 さらに、30 nmのLNPに負電荷を付与することで、これまでの30 nmの中性LNPと比較して効率的なリンパ節送達に成功した。また、30 nmの負電荷LNPはT細胞領域まで到達しており、Treg細胞の標的化に有用であることが示唆された。
|