研究課題/領域番号 |
17H03976
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
小暮 健太朗 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (70262540)
|
研究分担者 |
南川 典昭 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 教授 (40209820)
田中 保 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 准教授 (90258301)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ドラッグデリバリー / がん治療 / 微弱電流処理 |
研究実績の概要 |
腫瘍を標的としたナノ粒子は、EPR効果により腫瘍組織までは到達するが、腫瘍内への浸透と細胞取り込みが改善すべき課題である。一方、申請者は独自アプローチにより、微弱電流刺激(イオントフォレシス)が組織・細胞生理を変化させ、外来物質の浸透と細胞取込みを促進することを見出している。この知見に基づき本研究では、がん治療用核酸を封入したナノ粒子を担がんマウスに静脈内投与し、EPR効果により腫瘍に到達したナノ粒子を、腫瘍の微弱電流処理により、組織内に浸透させ、さらに細胞に取り込ませることで、効率的なRNAi効果によるがん治療法を確立することを目的としている。本研究は、3ステップからなり、平成29年度は、腫瘍内奥への核酸医薬封入ナノ粒子の効率よい浸透達成のため、イオントフォレシスにより腫瘍組織間隙開裂を誘導し、ナノ粒子の腫瘍内浸透と腫瘍血管透過性増大の検証を行った。具体的には、蛍光ラベル化したナノ粒子(PEG修飾リポソーム)を担癌マウスの尾静脈から投与し、腫瘍組織を回収した後、凍結切片を作成し、共焦点レーザー顕微鏡によって腫瘍内のリポソームを観察した。微弱電流処理による透過性が亢進される傾向はあるようだが、個々の担癌マウスにおいて腫瘍の状態が異なるため、定量的に評価するに至っていない。また腫瘍血管透過性の増大の評価が、担癌マウスでは困難であったため、発育鶏卵を用いて微弱電流処理による血管透過性亢進の定量的評価系を構築した。その結果、発育鶏卵静脈内に投与した蛍光色素が、微弱電流処理によって血管から漏出する傾向が観察され、微弱電流処理による血管透過性亢進が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
担癌マウスの担癌部位を微弱電流処理することにより透過性が亢進される傾向はあるようだが、個々の担癌マウスにおいて腫瘍の状態が異なるため、定量的に評価するに至っていない。この原因は、用いている細胞腫による可能性が高いことが考えられる。すなわち、マウスメラノーマB16F1細胞による腫瘍は、成長速度が早いため、腫瘍内部のネクローシスが発生している可能性があり、そのため結果にばらつきが出るのではないかと考えている。また腫瘍血管透過性の評価に関しては、腫瘍内部のネクローシス発生も関係すると思われ、期待した結果が得られていない。また、当初予定していたヘアレスマウスが、本学動物実験センターが認めていないウイルスを有している可能性があり、本学で購入することができなくなった。そのため、有毛のBALB/cマウスを使わざるを得ない状況となり、担癌部位の微弱電流処理なども煩雑になっており、電極の接触効率などが影響を受けている可能性が考えられている。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のように、当初予定と異なり、用いるマウスが有毛であるため、微弱電流処理時の電極接触効率などを安定化させる工夫を行う。具体的には、これまで脱脂綿にPBSを担持させてきたが、より安定して皮膚表面と電極双方に密着できる粘性シートを作成し用いる。すなわち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液をシート状に乾燥させたものを皮膚上に設置し、PBSを浸透させることで粘性シートとした上に電極を接触させることで安定な微弱電流処理を達成する。また、B16F1細胞とは異なる、マウス由来がん細胞を用い担癌マウスを作成することで、安定した腫瘍組織を実験に用いることとする。また、血管透過性亢進においても、動物およびがん細胞の問題によって困難であったが、発育鶏卵を用いることでクリアに血管透過性を評価できることが確認できたので、今後この系を用いて評価を行う。今後は、初年度に達成できなかった点をクリアするとともに、本年度予定している検討を達成したいと考えている。
|