研究課題/領域番号 |
17H03978
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大澤 匡範 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (60361606)
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研究分担者 |
横川 真梨子 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (60648020)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電位依存性イオンチャネル / 電位センサードメイン / 構造変化 |
研究実績の概要 |
電位依存性イオンチャネル(voltage-gated ion channel, VGIC)は、膜電位に応じた特定イオンの膜透過を通じて膜電位を制御し、神経伝達や心臓の拍動を担う膜タンパク質であり、創薬の標的としても重要である。VGIC は、膜電位に応じた電位センサードメイン(VSD) の構造変化が、ポアドメインのイオン透過路を開閉し、イオンを膜透過させる。本研究では、以下の4 点を通じて、VSDに結合してVGIC の機能を調節するリガンドの作用機序を解明し、VSD を新規創薬標的とする創薬戦略を確立することを目的とする。(1)各リガンドが結合するVSD の機能構造の同定、(2)VSD上の結合部位、結合に伴う構造変化部位、結合様式の構造生物学的解明、(3) VSD の機能構造選択的に結合する新規リガンドの探索、(4)VSD の機能構造選択的な創薬戦略の実現可能性の実証。 本研究では、不整脈に関わるhERG、精子受精能・異物貪食に関わるHv1、構造生物学的解析が進んでいるKvAPを解析対象としている。 hERGについては、VSDに特異的に結合するGating Modifier ToxinであるAPETx1の変異体を8種類調製し、それぞれのhERG阻害活性をパッチクランプ法で調べることにより、hERG阻害に重要なAPETx1の残基を同定した。hERG-VSDおよびhERG全長については、酵母での発現を試み、大量発現に成功した。FSECにより性状解析を進めている。Hv1については、活性化リガンドとの相互作用を等温滴定型カロリメトリーで解析する系の改善を試みている。また、阻害リガンドであるHaTx1の大量調製法の確立を試みている。KvAP全長については、SS-locking法の最適化検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
APETx1の電気生理実験が円滑に進捗し、hERG阻害に重要な残基を同定できたことが大きい。hERG-VSDやhERG全長の調製法についても、今年度酵母での発現系を導入した結果、FSECで単分散性の高い試料が調製できるようになった。 Hv1とKvAPについては、若干難航しているが、着実に問題解決を積み重ねてきている。
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今後の研究の推進方策 |
まだ、試料調製法の確立できていない、Hv1阻害toxinであるHaTx1の大量調製法を確立し、Hv1の活性に対する影響を評価する。 hERG-VSDおよびhERG全長については、大量調製法の確立および電気生理活性の確認を行う。 Hv1-AA/HaTx1、KvAP全長を含め、リガンドとの相互作用解析を行うとともに、X線結晶構造解析およびNMRにより、複合体構造を原子レベルで明らかにする。
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