研究実績の概要 |
電位依存性イオンチャネル(voltage-gated ion channel, VGIC)は、膜電位に応じた特定イオンの膜透過を通じて膜電位を制御し、神経伝達や心臓の拍動を担う膜タンパク質であり、創薬の標的としても重要である。VGIC は、膜電位に応じた電位センサードメイン(VSD) の構造変化が、ポアドメインのイオン透過路を開閉し、イオンを膜透過させる。本研究では、以下の4 点を通じて、VSDに結合してVGIC の機能を調節するリガンドの作用機序を解明し、VSD を新規創薬標的とする創薬戦略を確立することを目的とする。(1)各リガンドが結合するVSD の機能構造の同定、(2)VSD上の結合部位、結合に伴う構造変化部位、結合様式の構造生物学的解明、(3) VSD の機能構造選択的に結合する新規リガンドの探索、(4)VSD の機能構造選択的な創薬戦略の実現可能性の実証。 今年度は、不整脈に関わるhERGのVSDに特異的に結合するGating Modifier Toxin(GMT)の立体構造をNMRにより明らかにした。また、このGMTの変異体を調製し、それぞれのhERG阻害活性をパッチクランプ法で調べることにより、hERG阻害に重要なGMT上のアミノ酸残基を同定した。その結果、これらのアミノ酸残基は、APETx1の分子表面の1か所に局在することから、この分子表面がhERG結合界面であることが分かった。一方、アフリカツメガエルの卵母細胞に発現したhERGの野生型と変異体に対するAPETx1の阻害活性を評価することにより、APETx1による阻害活性に重要なhERG残基を同定に成功した。これらの情報を統合し、APETx1が認識するhERGの機能構造を推定した。
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