研究課題/領域番号 |
17H03981
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
堅田 利明 武蔵野大学, 薬学部, 教授 (10088859)
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研究分担者 |
福山 征光 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (20422389)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生化学 / 細胞情報伝達機構 / Gタンパク質 |
研究実績の概要 |
1.DiRasはSmgGDSと複合体を形成し、不活性状態として細胞質に存在することを先に報告したが、このsmgGDSは別種の低分子量Gタンパク質RhoAに対して、グアニンヌクレオチド交換反応を促進するGEF作用を有する。さらに、smgGDSの異なる分子種が、同じ低分子量Gタンパク質に対して別種の作用をもつことを見出した。RhoAをモデルにしてsmgGDSとの複合体の詳細な結晶構造解析を進め、smgGDSが低分子量Gタンパク質に対してGEF作用と分子シャペロンという別種の作用をもたらす分子基盤を解明した。 2.ヘテロ二量体型Ragについては、平成29年度に引き続き、恒常活性化Ragによって生じる表現型を模倣する変異体群の解析をおこなった。単離した6つの変異体のうち、4つが同一のアシル基転移酵素をコードする遺伝子上に変異をもつことが明らかとなった。また、その遺伝子の欠失変異体をストックセンターより取り寄せ解析したところ、我々が単離した変異体と同様に、恒常活性化Ragによって生じる表現型を示すことが明らかとなった。また、残る2つの変異体に関しては候補遺伝子を数個に絞り込むことができた。 3.平成30年度からは、病原性真菌の形態形成に介在するGサイクルについても解析を進め、諸種の低分子量Gタンパク質阻害剤を皮膚糸状菌に作用させた結果、Rac阻害剤が特異的に皮膚糸状菌の菌糸形成を阻害することを見出した。高等真核生物のRacは、アクチン制御に必須の役割を果たしていることから、皮膚糸状菌のRacも菌糸成長という形態形成に介在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.DiRasの結合調節因子SmgGDSについては,RhoAをモデルにしてsmgGDSとの複合体の詳細な結晶構造解析を進め、smgGDSが低分子量Gタンパク質に対してGEF作用と分子シャペロンという別種の作用をもたらす分子基盤を解明した。 2.ヘテロ二量体型Ragについては、現在同定したアシル基転移酵素遺伝子の発現解析をおこなうべく、fosmidベクターを作成している。また、遺伝子が同定できていない変異体に関しては救助実験を続行して、責任遺伝子を同定する段階に入っている。 3.真菌の形態形成・病原性に介在するGサイクルについては、低分子量Gタンパク質阻害剤を病原性真菌である皮膚糸状菌に作用させ、Rac阻害剤が皮膚糸状菌の菌糸形成を阻害することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
ヘテロ二量体型Ragについては、発現レポーター遺伝子をもちい、栄養応答性や組織分布、細胞内局在を調べる。発現組織同定後、組織特異的プロモーターを用いた救助実験により、アシル基転移酵素遺伝子の機能する組織を同定する。単離した変異体ではRagが恒常活性化している可能性がある。哺乳動物では複数のRag活性抑制因子群が同定されており、複数が線虫で保存されている。それらの変異体やRag変異体と、今回単離した変異体との表現型の相違を比較して遺伝学的相互作用を検討することで、今回同定した遺伝子とRagとの相互作用や、Ragの活性調節の臓器特異性などの解明を目指す。 真菌の形態形成・病原性に介在するGサイクルについては、Rac低分子量Gタンパク質の活性化因子GEFの作用についても探索を進め、病原性の発現に至るシグナル伝達経路をより詳細に解明する。
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