研究実績の概要 |
ユビキチン修飾系はタンパク質分解だけでなく、シグナル伝達やDNA修復など多彩な細胞内機能を担っている。こうしたユビキチンの多彩な機能は、ポリユビキチン鎖の構造多様性を基盤としている。そこで本研究では、近年明らかになった分岐型ユビキチン鎖に着目し、分岐型ユビキチン鎖が司るシグナル伝達機構解明を試みた。これまでに、NEDD4ファミリーに属するユビキチンリガーゼITCHがUBR5と協働して分岐型ユビキチン鎖を形成すること、その基質はアポトーシス制御因子TXNIPであり、分岐鎖によってアポトーシスが制御されていることを見出してきた。そこで、さらなる新規の分岐鎖形成酵素の探索を行った。その結果、NF-kBシグナルや細胞生存に関与することが知られているIAPファミリーのユビキチンリガーゼがin vitroおよび細胞内で分岐鎖を形成することを見出した。IAPファミリーはK48,K11,K63連結型ユビキチン鎖を形成することが従来報告されていたが、本研究での定量的な測定の結果、これらの連結型が分岐鎖を形成していることがはじめて明らかとなった。さらに、培養細胞を用いた解析から、IAPファミリーを活性化する低分子化合物依存的に分岐鎖形成が促進されることが明らかとなった。興味深いことに、ITCHによる分岐鎖形成を仲介するUBR5,UBR4はIAPによる分岐鎖形成には不要であることが判明し、分岐鎖形成機構の多様性が明らかとなった。
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