研究課題
ユビキチン修飾系はタンパク質分解だけでなく、シグナル伝達やDNA修復など多彩な細胞内機能を担っている。こうしたユビキチンの多彩な機能は、ポリユビキチン鎖の構造多様性を基盤としている。そこで本研究では、近年明らかになった分岐型ユビキチン鎖に着目し、分岐型ユビキチン鎖が司るシグナル伝達機構解明を試みた。これまでに、HECT型ユビキチンリガーゼITCHとUBR5が協働して分岐型ユビキチン鎖を形成してTXNIPの分解を誘導することを報告し、さらに新規の分岐鎖形成酵素を探索したところIAP (Inhibitor of Apoptosis) ファミリーのユビキチンリガーゼを見出した。そこで本年度はNF-kBシグナル伝達に関わるcIAP1に着目した。ミドルダウン質量分析法を用いた分岐鎖測定手法を構築した。その結果、野生型ユビキチンを用いて分岐鎖の検出が可能となり、cIAP1がin vitroにおいて分岐鎖を形成することが明確化された。一方、分岐鎖形成ユビキチンリガーゼの基質探索のため、タンデム質量タグ法(TMT法)による網羅解析を導入し、基質候補因子をプロテオームレベルで探索することが可能となった。その結果、細胞抽出液から約8000個の蛋白質を定量し、我々が分岐鎖形成酵素として同定したUBR5のノックダウン細胞で蓄積する基質候補因子群を同定することに成功した。さらに、これら候補因子群が分岐鎖の基質となるか否かについて解析を進行している。
2: おおむね順調に進展している
ミドルダウン質量分析法を用いた分岐鎖測定手法を構築し、着目しているユビキチンリガーゼがin vitroにおいて分岐鎖を形成することを明確化することに成功した。さらにタンデム質量タグ法(TMT法)による網羅解析を導入し、基質候補因子をプロテオームレベルで探索することが可能となり、我々が分岐鎖形成酵素として同定したUBR5のノックダウン細胞で蓄積する基質候補因子群を同定することに成功した。
現在、分岐鎖形成酵素UBR5の制御を受ける基質候補因子群を同定したので、これら候補因子群が分岐鎖の基質となるか否か、またプロテアソーム依存性タンパク質分解に関与するか否かについて引き続き解析を進行する。
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Nature
巻: 578 ページ: 296-300
10.1038/s41586-020-1982-9
生化学
巻: 91 ページ: 57-63