本研究の目的は、脳内免疫細胞であるマイクログリアが脳内温度を感知する能力を有する可能性とそのメカニズムを明らかにすることである。また、脳温変化を感知して活性化したマイクログリアが、免疫細胞としての貪食能力を利用して神経回路を変性させる可能性と、その脳機能への影響を問う。この問いに答えるための実験系として、熱性けいれんモデルマウスを利用し、熱性けいれん時の脳温上昇と、これに引き続く遅発性けいれんに着目した。 今年度は、マイクログリア培養系において、神経活動依存的なシナプス貪食に補体分子とカスパーゼが関与することを明らかにした。すなわち、過剰な神経活動がシナティックアポトーシスを誘導し、これが、シナプスへの補体の集積につながった。そして、マイクログリアは、このようなシナプスを貪食することが明らかになった。 上述の現象が、熱性けいれんモデルでも生じている可能性を検証したところ、熱性けいれん後の抑制性シナプスがシナプティックアポトーシスを起こし、マイクログリアによって貪食されることが明らかになった。このメカニズムによって海馬歯状回における抑制性シナプス密度が減少し、シナプスE/Iバランスが興奮性優位になることで、てんかん原性獲得につながった。
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