研究課題/領域番号 |
17H03990
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
杉本 幸彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (80243038)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プロスタグランジン / 脂肪酸酸化物 / GPCR / シグナル伝達 / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
細胞膜リン脂質は、酸化ストレス性刺激で酸化され、酸化リン脂質となって細胞に種々の影響を及ぼすが、その作用機序は不明である。申請者は、ヒトプロスタグランジン(PG) 受容体の結晶構造の決定を契機として、酸化リン脂質がPGとは異なる様式でPG受容体に作用する可能性を見出した。本研究の目的は、PGなど酸化脂肪酸の受容体が、従来リガンドとは別に細胞膜アクセス性リガンドとして酸化リン脂質を認識するとの仮説を立て、(1)PG受容体の細胞膜リガンドの分子実体を同定するとともに、(2)膜リガンド-受容体の結晶構造、(3)膜リガンドによるPG受容体活性化作用の生理的意義、ならびに(4)他のPGやロイコトリエンなど脂質メディエーター受容体での普遍性、さらに(5)ヒトでの意義、を解明することで、酸化脂肪酸の受容体にユニークな動作原理を解き明かし、これを標的とした医薬応用のための分子基盤を確立することである。 29年度は、以下の成果を得た。 1)PG受容体発現細胞を酸化リン脂質混合物で処理すると細胞内シグナル経路の活性化が見られ、これはホスホリパーゼ(PL)A2阻害剤の存在下でも観察された。従って、PLA2で切断された酸化脂肪酸ではなく、酸化リン脂質の状態でPG受容体に結合・活性化している可能性が示唆された。2)上記の活性化は、本PG受容体遮断薬で阻害され、本PG受容体の細胞外ループ構造を認識する抗体では阻害されなかった。3)酸化リン脂質混合物を画分に分け、本PG受容体活性化能と相関する分子を質量分析を用いて解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
期待した通りの結果がえられており、初年度の成果としては順調と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
この調子で本研究を推進したいと考える。ただ、酸化脂肪酸分子の実体を捉えることは容易ではないため、この点に関しては、いくつかの方策を用意し、状況に応じて準備しておく必要があると考える。
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