研究課題
本研究では,がん幹細胞の生存と適度な分裂を支える「がん微小環境」を標的とし,がん微小環境で亢進するシグナル分子をターゲットとして,その機能を抑制し正常化を促進する高活性低分子化合物を天然物から探索し,その機能を解明することを目的とする.そのような標的シグナルの中から,幹細胞の自己複製に関わるウィント(Wnt)およびがん選択的にアポトーシスを誘導するトレイル(TRAIL),およびエピジェネティック遺伝子転写を制御するポリコーム構成分子の一つであるBMI1のプロモーター阻害作用等に関するスクリーニング行った.1)Wntシグナル阻害作用に関するスクリーニングを行った結果,タイ産Santalum album木部のメタノール抽出物に顕著な活性が認められたため,本抽出物を各種クロマトグラフィーで分画を行い,3種の新規セスキテルペン化合物と5種の既知セスキテルペンを単離した.これら8種の化合物のうち既知のmansonone Iがとくに顕著なWntシグナル阻害作用を示した(IC50値1.2μM).本化合物はβ-カテニンを減少させることなく標的タンパク質のCyclinD1を減少させた.2)BMI1のプロモーター阻害作用に関して,当研究室保有の放線菌培養エキスコレクションを用いたスクリーニングを行った.その結果,強い阻害活性を示した放線菌株,Steptomyces sp. IFM11958株の大量培養エキスから,6種の既知天然物を単離した.そのうち,最も強い活性を示したマクロリド二量体elaiophylinは,BMI1プロモーター阻害作用に関するIC50値は30 nMときわめて強力であった.また,濃度依存的にBMI1の転写量を減少させ,その下流のがん抑制遺伝子Ink4aの転写量を回復させることが分かった.またがん幹細胞性の指標である細胞塊の形成を減少させることも判明した.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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