研究課題/領域番号 |
17H03995
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
藤井 勲 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (70181302)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポリケタイド / ポリケタイド合成酵素 / 生合成 |
研究実績の概要 |
昨年度、出芽酵母S. cerevisiae BJ5464株にA. nidulansのnpgAを組み込んだ発現用酵母宿主を用いて、iPKSの発現に成功したことから、これをベースとして、還元型iPKSとしてShmA PKSのタンパクレベルでの発現確認と精製について検討した。精製用tagとして汎用されるHis-tag付加体についてまず検討したが、Ni affinityによるShmAタンパクの精製を確認することはできなかった。そこで、抗体カラムによる精製の成功例が報告されているPA-tagについて検討したが、ShmA PA-tag体の発現、精製は確認できなかった。次いで、特異性の高い精製が報告されているHaloTag付加体についても検討したが、組換え酵母での発現は確認できなかった。酵母を宿主とした場合、PKSの機能的発現により化合物の生産が微量であってもHPLCなどで確認はできるものの、タンパクとしての発現量としては少ないことが原因を考えられた。そこで、タンパクの高発現系であるA. oryzaeの系に立ち返り、ShmAのHaloTag付加体の発現について検討したところ、予備的ではあるもののShmAのHaloTag付加体の発現と部分精製をSDS-PAGEで確認することができた。 E. variecolor株由来のtriacetic acid lactone(TAL)合成酵素(TALS)をベースとして6-メチルサリチル酸合成酵素のKS部分をTALSのSAT-KS部分と置き換えたキメラ体を構築し、酵母での発現について検討したが、生産物として予想したTALの生産を確認することはできなかった。キメラ体として機能しないか、あるいは機能してもTAL生産量が少ないか不明であり、このキメラ体の発現についてもA. oryzaeの系で再検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ポリケタイド化合物の骨格生成を担う鍵酵素である繰返しタイプI型ポリケタイド合成酵素(iPKS)における反応制御機構、三次元構造の解明を目指すため、酵母Sacchromyces cerevisae BJ5464株での発現を種々検討し、発現プロモーターとしてADH2を用いることにより、酵母でのiPKSの機能的発現を確認することができたが、iPKS発現組換え酵母におけるタンパク発現量はaffinity精製の状況などから判断する限りかなり低いことが判明した。目的とするiPKSの精製、3次元構造の解明のためにはタンパク発現量の高いA. oryzaeの発現系を利用すべきであると判断し、ShmAについては予備的ではあるもののタンパクとしての発現の確認をすることができた。iPKSの反応制御機構および三次元構造解明のための基盤を築くため、還元型iPKSとしてShmA、芳香族型iPKSとして、TALSとATXを中心として、研究を進め、クライオ電子顕微鏡による構造解析へとつながるよう研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、繰返しtype I型ポリケタイド合成酵素(iPKS)の構造解析を目的として、iPKSタンパク高発現系の構築、精製を試み、クライオ電顕などによる構造解析の道筋をつけることを目標に下記の計画で研究を進める。 【1】iPKS高発現系の開発:出芽酵母Saccharomyces cerevisiae BJ5464株にAspergillus属由来のphosphopantetheine転移酵素遺伝子を組み込んだ発現用酵母宿主を用いて、還元型iPKSの機能的発現に成功はしたが、タンパクとしての発現量は少なく各種tagを用いても精製にはいたらなかった。そこで、従来から化合物生産のホストとして使用してきた麹カビAspergillus oryzaeを宿主として、iPKSタンパクの高発現について検討する。その対象としてShmAなどの還元型iPKS、およびMSASやATXなどの芳香族型iPKSを取り上げ、各種tag付加などによるアフィニティー精製など、効率的な精製方法の確立を検討する。 【2】最小iPKSの構築と発現:これまでに知られている最小のiPKSであるEmericella variecolor GF10株のtriacetic acid lactone(TAL)合成酵素(TALS)について、A. oryzaeでの発現、精製を検討し、2つのACPドメインを1つにしたのSAT-KS-AT-ACP変異体を構築して、タンパクの発現、精製を検討する。 【3】クライオ電子顕微鏡による構造解析の検討:発現、精製することができたiPKSについて、クライオ電子顕微鏡による構造解析の検討へと進める。
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備考 |
岩手医科大学薬学部天然物化学分野ホームページ http://inpc.iwate-med.ac.jp/iNPC_IMU/HOME.html
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