本課題は、疾病増悪因子としての機能性タンパク質を標的に、柱(1):標的の活性を直接制御するリガンド、柱(2):標的の分解/消失または安定性を制御するリガンド、ならびに柱(3):標的の細胞内局在を制御するリガンド、を軸として、標的多重性ないし機能多重性を持たせたリガンドの創製を目的としてきた。 本2019年度はこれまでの2017/2018年度の研究を継続させたが、柱(1)については新たにプロゲステロン核内受容体アンタゴニストやケイ素含有核内受容体リガンド、さらにはホスフィノフェノール骨格を有するエストロゲン核内受容体リガンドの創製に成功した。柱(2)については2018年度に引き続き、神経変性疾患に関わる凝集性タンパク質の分解・消失を狙い、関連の凝集性タンパク質の包括的分解誘導剤の創製に成功し,加えてエストロゲン核内受容体の分解誘導性リガンドについて、その構造要因に関する一定の解答を得ることが出来た。柱(3)についても2018年痔に引き続き、ニーマン・ピック病C型を念頭に、その原因となる変異コレステロールトランスポーターNPC1の異常細胞内局在を修正する活性化合物(薬理シャペロン活性化合物)として発見したイトラコナゾールの構造展開を継続実施した。同時に、柱(2)/(3)融合型のテーマとして昨2018年度に開始した、コレステロール生合成過程における律速代謝酵素の分解誘導についての解析を、生理的な脂質代謝のホメオステーシス維持機構の観点から拡充遂行した。その結果、(i)HMG-CoA還元酵素の分解を誘導するSR12813の構造活性相関情報の取得とその光親和性標識プローブ化に成功し、(ii)コレステロール合成酵素スクアレンモノオキシゲネースに対して、その基質であるスクアレンがアロステリックにフィードフォワード因子として働く可能性を提示した
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