研究課題
全身性強皮症は皮膚や組織にコラーゲンが蓄積して硬化、線維化する自己免疫疾患である。明確な原因が不明で、対症療法のみで根治薬がなく、難病に指定されている。しばしば間質性肺炎、腎クリーゼなどの内臓線維化による重篤な疾患を併発し、死に至る場合もある。全身性強皮症はTGF-β/Smad系、PI3K/Akt系、自己免疫系などの諸因子が複合的に関与する疾患で、1つの蛋白質を標的として特異的に抑えても他の経路をバイパスとして病態が進行するため、単一標的アプローチでは治癒が困難である。全身性強皮症を治癒させるにはマルチ標的アプローチが必要と考えられる。本研究では単一の蛋白質を指標としたスクリーニングではなく、細胞の形態変化を光学的に検出するスクリーニング法を採用し、研究代表者の合成した各種化合物のなかから良好な活性をもつ化合物Xを見出した。化合物XはTGF-βで刺激した繊維芽細胞および強皮症患者由来細胞のコラーゲン産生を濃度依存的に抑えた。細胞実験の結果、化合物Xは全身性強皮症の複数の原因蛋白質に作用するマルチ標的化合物であることが明らかになった。化合物Xをブレオマイシンで誘導した強皮症モデルマウスに経口投与したところ、皮膚の肥厚が抑制された。化合物Xは予防的(ブレオマイシンと同時に投与し皮膚硬化を抑える)にも治療的(ブレオマイシンを先に投与して皮膚硬化が起こった後から化合物Xを投与し皮膚硬化を正常化する)にも効果を示した。特段の毒性は見られなかった。そこで化合物Xの標的蛋白質を探索している。また 化合物Xをリードとした構造最適化を行っている。
2: おおむね順調に進展している
細胞の形態変化を光学的に検出するスクリーニング法により、研究代表者の合成した化合物のなかから見出した良好な活性をもつ化合物Xは、TGF-βで刺激した繊維芽細胞のコラーゲン産生を濃度依存的に抑えた。細胞実験の結果、化合物Xは全身性強皮症の複数の原因蛋白質に作用するマルチ標的化合物であることを見出した。化合物Xは強皮症モデルマウスに対して経口投与により皮膚の肥厚を抑制し、特段の毒性を示さないことを明らかにした。さらに化合物Xの標的蛋白質を探索している。また化合物Xをリードとした構造最適化を行っている。よっておおむね順調に進展している。
化合物Xの作用標的の全貌の解明:複数のタンパク質に作用する化合物Xが直接結合する標的蛋白質を明らかにする。化合物Xの構造最適化:HPH-15が標的蛋白質によりよく結合するよう、構造最適化を行う。その化合物を化学合成する。PI3K/Aktを阻害する化合物の創製:組織線維化につながるPI3K/Aktを阻害する化合物を見出す。その化合物の細胞透過が困難で高濃度である場合はそれをプロドラッグ化して細胞内透過性の向上を図り、強皮症細胞における抗線維化作用を検討する。自己免疫疾患全身性強皮症対応化合物:全身性強皮症は自己免疫疾患であることから、自己免疫関連物質を消去不活化して全身性強皮症治療薬として有用な物質を探索する。
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