研究課題
全身性強皮症は皮膚や組織にコラーゲンが蓄積して硬化、線維化する自己免疫疾患である。明確な原因が不明で、対症療法のみで根治薬がなく、難病に指定されている。しばしば間質性肺炎、腎クリーゼなどの内臓線維化による重篤な疾患を併発し、死に至る場合もある。全身性強皮症はTGF-β/Smad系、PI3K/Akt系、自己免疫系などの諸因子が複合的に関与する疾患で、1つの蛋白質を標的として特異的に抑えても他の経路をバイパスとして病態が進行するため、単一標的アプローチでは治癒が困難である。全身性強皮症を治癒させるにはマルチ標的アプローチが必要と考えられる。本研究では単一の蛋白質を指標としたスクリーニングではなく、細胞の形態変化を光学的に検出するスクリーニング法を採用し、研究代表者の合成した各種化合物のなかから良好な活性をもつ化合物HPH-15を見出した。本研究では化合物HPH-15が作用する標的タンパク質を同定し、HPH-15の活性と体内動態を改良すべく構造最適化を行うことを目的とした。化合物HPH-15の10種類の誘導体を合成し、TGF-β刺激成人由来皮膚細胞に加え、コラーゲン産生抑制効果を調べた。そのうち4個の化合物はHPH-15と同等の活性を示した。HPH-15の標的タンパク質同定のためにHPH-15にビオチンを導入したBiotin-HPH-15の合成を行った。Biotin-HPH-15は成人由来皮膚細胞にTGF-βを作用させない場合においてのみ、コラーゲン産生を抑制した。Biotin-HPH-15をアビジン担持磁気ビーズに固定化し、プルダウン法により線維芽細胞からHPH-15標的タンパク質のバンドを得た。そのバンドが何のタンパク質のバンドであるか検討中である。
2: おおむね順調に進展している
化合物HPH-15の誘導体を10種類合成することができ、そのうち4種類は活性の良好であった。また、Biotin-HPH-15により標的タンパク質のバンドを得ることができた。よって、おおむね順調に進展しているということができる。
Biotin-HPH-15を用いHPH-15の標的タンパク質のバンドを得るところまで達成できたので、そのバンドが何のタンパク質のバンドであるか検討する。HPH-15の体内動態について、マウスを用いて検討する。
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