研究課題
1)PVF-tetのマウス感染モデルでの効果: PVF-tetが他のA型インフルエンザウイルスに対しても効果を示すか否かを、A/California/04/09 (H1N1pdm)、A/Tokyo/UTHP013/2016 (H1N1pdm)、A/Aichi/2/68(H3N2) (東京大学医科学研究所河岡義裕先生より供与)の3株を用いて検討した。その結果いずれの場合にもマウスに対する致死性を効率よく阻害することを見出した。さらにこれらウイルス株に対するPVF-tetの阻害効果、構造体形成誘導能の有無についてMDCK細胞を用いた検討を行ったところ、いずれの現象についてもH1N1-PR8の場合と同様に観察できること、すなわちPVF-tetは共通したメカニズムで複数の亜型ウイルスに対しても抗ウイルス活性を示す汎用性の高い治療薬として期待できることが示された。2)ラメラボディ形成におけるABCA3の効果: ABCA3高発現細胞株をMDCK細胞より樹立し、ウイルス感染に対する防御能を検討した。その結果、ABCA3高発現細胞株では、強い防御能を示すことを見出した。さらに、ABCA3高発現でもPVF-tet処理の場合と同様に、抗ウイルス活性を示すアンフィソームが形成されていることを見出した。3)高病原性H5N1由来HA(H5HA)に対する阻害ペプチドの同定PVF-tet の配列をベースとし、ヒト型受容体であるアルファ2-6結合のシアル酸(SA)を認識できるように変異導入した強毒性HA5変異体(mH5HA)に最適化した阻害ペプチドを取得することを目的とし、多価型ペプチドシートスクリーニング技術を用いたスクリーニングを行った。その結果、PVF-tet の配列中にmH5HAへの結合活性に必須の役割を果たしているアミノ酸を複数同定した。
2: おおむね順調に進展している
1)PVF-tetのマウス感染モデルでの効果: PVF-tetがA/California/04/09 (H1N1pdm)、A/Tokyo/UTHP013/2016 (H1N1pdm)、A/Aichi/2/68(H3N2) 、いずれの場合にもマウスに対する致死性を効率よく阻害することを見出した。本知見は、PVF-tetが共通したメカニズムで複数の亜型ウイルスに対しても抗ウイルス活性を示す汎用性の高い治療薬であることを明確に示しており、当初の予想を上回る成果ということができる。2)ラメラボディ形成におけるABCA3の効果: ABCA3高発現細胞株では、強い防御能を示すこと、さらにPVF-tet処理の場合と同様に、抗ウイルス活性を示すアンフィソームが形成されていることを見出した。これは、誘導性アンフィソームがその形成機構によらず抗ウイルス活性を示すことが一般化できることを示しており、本知見についても、当初の予想を上回る成果ということができる。
本年度の成果により、PVF-tetによって形成されるアンフィソーム、ABCA3高発現によって形成されるアンフィソーム、いずれの場合にも高い抗ウイルス活性を示すことが明らかとなった。このことから、今後はこれらアンフィソームを個別に単離する系を確立し、その構成成分である、脂質成分、タンパク成分について、各々網羅的解析を行うことが重要になる。これらの検討により、これらアンフィソームの形成機構を分子レベルで明らかにしてゆくことで、その生成を誘導・増強することによる新たな治療法の確立、さらに新たな創薬標的の同定、へと発展するものと期待される。
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Nat. Commun.
巻: 11(1):162 ページ: 1-17
10.1038/s41467-019-13974-w