研究課題/領域番号 |
17H04012
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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研究分担者 |
中野 知之 山形大学, 医学部, 准教授 (00333948)
田中 俊昭 山形大学, 医学部, 助教 (70536987)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ジアシルグリセロールキナーゼ / エネルギー代謝 / 生活習慣病 / 脂肪組織リモデリング / 褐色脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
両親媒性の性質を持つリン脂質は、脂質二重層を形成し、外界から隔離された「細胞」という微小空間を成立させる。脂質二重層を構成するリン脂質は、グリセロ脂質であるジアシルグリセロール(DG)のリン酸化を起点として合成されるが、このDGはエネルギー代謝や情報伝達系とも密接に関与する。我々はこれまで、DGのリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK)の遺伝子クローニングと形態学的解析に従事し、DGKファミリーの分子発現局在の多様性を解明してきたが、本研究では、各アイソザイムの機能解析を発展させ、DGKという脂質代謝酵素ファミリーから観た生命現象について細胞応答から個体レベルの解析を行うことにより、1)ストレス応答、2)炎症応答、3)生活習慣病、4)高次脳機能の病態解明に向けた研究基盤を確立することを目的とするものである。 昨年度の研究成果を踏まえて本年度は、ε型DGK(DGKε)とエネルギー代謝との関連をさらに追求した。これまで我々はDGKε-KOマウスを高脂肪食で40日給餌すると肥満やインスリン抵抗性が惹起されることを報告したが、さらに90日間の長期間給餌を行うと内臓脂肪組織中に褐色脂肪細胞が多数出現すること(褐色化)を見出した。この褐色脂肪細胞は熱産生に関与することから、寒冷刺激による褐色化を精査した。その結果、DGKε-KOマウスでは室温条件でも皮下白色脂肪組織に多胞性の褐色脂肪様細胞が多数観察され、寒冷暴露後も野生型マウスに比して褐色化が亢進していた。この時KOマウスの脂肪組織には、褐色脂肪細胞マーカーUCP1(uncoupling protein 1)のタンパク発現亢進も認められた。以上の結果、DGKεは寒冷暴露時の脂肪組織のリモデリングに関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、DGKファミリー各アイソザイムの機能解析を発展させ、DGKという脂質代謝酵素から観た生命現象について細胞応答から個体レベルの解析を行うことにより、1)ストレス応答、2)炎症応答、3)生活習慣病、4)高次脳機能の病態解明に向けた研究基盤を確立することを目的とするものである。これらのテーマに関して個別に実験を進め、ある程度の基礎データが得られた時点で、一つのテーマについて集中的に精査を行っているが、昨年度はDGKεと生活習慣病に関する研究の進展が見られ、論文作成まで到達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、その他のテーマについても研究を進める予定であるが、まず、炎症およびストレス応答の主要調節因子であるNF-kB制御メカニズムに関するDGKの機能的役割を追求する予定である。DGKとNF-kBに関しては、これまで転写活性制御に関する論文報告を行っているが、その詳細な関与は未だ不明である。さらにDGK結合蛋白も視野に入れた報告はないので、これらの点を精査する。
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